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道化師は微笑う。

TOA中心二次創作サイト。

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『知らぬは~』過去編⑪


ジェイドとアスランの努力の賜物か、あるいはピオニー自身が頑張ったからなのか、かつてよりも早くピオニーはマルクト帝国皇帝となった。ちなみにピオニーも逆行していたということは即位して初めて明かされた事実である。ピオニーの方はジェイドとアスランの自身の即位に関わる活躍から彼らが未来を知るモノであるとの当たりはつけていた。
ジェイドのキムラスカ亡命計画はピオニーが身を挺して阻止したようである。
「おまえが亡命するっていうなら、俺もついていくからな」
皇帝自ら他国に亡命してはまずいと、ジェイドであっても諦めざるを得なかった。
そしてもう一つジェイドがマルクトに留まらなければならない理由が出来てしまったのだが、もしかしたらそちらの方が影響力があったかもしれない。
ピオニーがネフリーを諦めていないのである。
ルーク誕生以降預言を詠むことが難しい世界になったため、ネフリーの結婚に関する預言も詠まれていなかった。かつてのネフリーが不幸だったとは思わないが、自分の方がもっと幸せにする自信があると、オズボーン子爵との結婚話をピオニーが握り潰したのである。
「職権乱用も甚だしいですね」
ジェイドの嘆息も何のその。そんな事でめげるようでは幼馴染なんてやっていられるか、とピオニーは強気だった。
「俺はネフリーと結婚するぞ」
ジェイドにそう宣言して秘奥義を食らおうとも、ピオニーの決意は揺らがなかった。
「その件に関してはすべての問題が片付いてから考えましょう」
ジェイドも最終的には結婚を許すことになるだろう―――ピオニーのことだからジェイドが許さずとも勝手に結婚するだろう―――とわかってはいた。色々終わってからと問題を先送りにするぐらいしかジェイドにできる抵抗はなかった。ヴァンやモースのこと、レプリカ、障気、等々よりもジェイドにとっては頭の痛い問題が生じた瞬間だった。
「ネフリーの婚期が遅れるのは不本意なのですけどね」
ジェイドが胸の内をピオニーに明かすことはないだろう。知った瞬間にピオニーが結婚式を挙げかねないからである。
一方ピオニーの目下の悩みはジェイドを「兄さん」―――あるいは「兄上」「兄貴」でも可である―――と呼ばなければならないことだけだった。



さてここで、今までの経緯をおさらいしておこうではないか。

まずはマルクトである。
逆行しているのはジェイド、ピオニー、アスラン。
協力者はネフリーぐらいだろうか? アニスの両親はマルクト国内にいるが、現時点では協力というよりジェイドの保護下で立派な親となるべく更生中である。マルクト軍は逆行組三人が掌握しているので、事情は知らずとも協力せざるを得ない状態だった。もちろん反対勢力がいないわけではない。貴族院の一部や預言遵守派などが目障りだったが、ピオニーは象に集る蟻ぐらいにしか思っておらず放置していた。
「蟻を放置して取り返しの付かないことになっては困りますからね」
しかしジェイドは蟻にも容赦がなかった。
ほら白蟻なんか放置しておくと家を壊すこともあるじゃないですか、まぁ白蟻は蟻じゃないですけど。


次にダアトである。
逆行しているのはアッシュ、ティア、アニス。
協力者はオリジナルイオン、アリエッタ、ディスト。アリエッタはイオンによって引きずり込まれたようである。ディストも協力者と言っていいものだろうか? 利用? まぁ本人幸せそうなので問題はないだろう。
時々ルークが遊びに来ているようだった。本人はアッシュのふりをしているつもりなのだが、事情を知るモノにとってその違いは明らかである。
ルークがアッシュのレプリカであることは未だイオンには内緒だったが、レプリカイオンたちの誕生の時期が迫っていることもあり、そろそろ打ち明けようかとアッシュたちは考えていた。
ヴァンとモースがイオンのレプリカを作ろうとしていることなどはティアとアニスが探ってきたということにしておけば誤魔化せるだろう。レプリカイオンたちに会いたい逆行組はどうやってイオンを丸め込もうかと必死だった。ヴァンとモースの企みを阻止することは難しい、なんて理由でイオンは納得してくれるだろうか?
とりあえずレプリカに対する間違った知識をヴァンやモースから植え付けられる前に、ルークがレプリカであるということを教えることにした。イオンがレプリカをどう思うか、すべてはそれを確認してからである。
アッシュとルークの関係を見ていた所為か、イオンのレプリカに対する認識に偏見はなかった。いやちょっと別な方向に偏見があるような気がしないでもない。
「レプリカというのも悪くないね。むしろ面白そうなんじゃないの」
何が面白そうなのか色々と不安になるが、気付かないふりをしていた方が賢明だろうか。
ジェイドが立てたイオンに死の預言が詠まれたことの仮説も隠すことなく説明した。この三年近くジェイドもディストも頑張ったのでレプリカ情報採取時の危険性などはかなり低くなっているはずである、と。
「今なら死の預言が詠まれることもないだろう。なんなら試してみるか?」
その確信はどこからくるのだろう。アッシュはけっこうチャレンジャーだった。仮説が間違っていて死の預言がまだ残っていたらどうするつもりだったのだろう?
「少し考えさせてもらうよ」
本当に少しだった。
自室に篭って一時間もしない内に出てきたイオンは晴れ晴れとした笑顔でレプリカ情報の抽出に同意したのである。
死の預言はもう詠まれていなかったのだろうか? それとも預言を詠むために篭ったのではないのだろうか? イオンが自室で何をしていたのか明かすことはなかったので、そこは謎のままである。
一連の作業は他の研究者やヴァンやモースを締め出し、ジェイドとディストが行うことになった。
ピオニーの皇帝即位後、ジェイドは時々ダアトを公式訪問していた。キムラスカ亡命の野望が断たれた今、ルークに会える可能性があるのはここだけだったので、無理やり用事を作っていると言っても過言ではないだろう。
ジェイドのダアトでの肩書きはピオニーの即位式で知り合った高名な医者ということになっていた。グランコクマ訪問時に世話になりイオンに気に入られ主治医に任命されたのだ。もちろんアッシュたちの口添えがあってのことである。
マルクト軍所属なのでイオンに付きっ切りというわけにはいかなかったが、月に一度は診察のためにダアトに訪れていた。ジェイド的にはイオンに付きっ切りでもよかった―――ダアトにいる方がルークに会える可能性が増すし、ダアト常駐ならローレライロードを使ってのファブレ家訪問も容易いからである――――が、ピオニーが阻止したのだ。ジェイドがいないと困るからというよりも、「おまえにだけいい思いをさせてたまるか」というのがピオニーの本音だった。


最後はバチカル組である。
逆行しているのはルーク、ガイ、ナタリア、ジョゼット。
協力者はシュザンヌ、ペール、ファブレ家のメイドたち、新白光騎士団(仮)。
捏造した預言を信じたクリムゾンは、白光騎士団やラムダスたち供なってベルケンドに駐留していた。
インゴベルトや預言遵守派の重鎮に関してはナタリアが頑張ってはいたが、芳しい成果は得られていなかった。最終的にモースよりも自分を選ばせるために、ナタリアはインゴベルトとの素敵な親子関係を築く努力を怠ったりはしていないが、以前のような何も知らない無邪気な王女様を演じることはできなかったので、国政にも首を突っ込めるだけ突っ込んだ結果、国民の王女人気は以前よりも上昇していた。その所為で国の重鎮の中にはナタリアを煙たがる人間も多くいた。しかしナタリアはめげなかった。今回は王女様のままごと政治ではないので邪魔しようにも簡単に邪魔できるものでもないだろう。
ガイとジョゼットが従姉弟同士、つまりガイの本名がガイラルディア・ガラン・ガルディオスであることはシュザンヌにのみ明らかにされた。宝刀ガルディオスはシュザンヌに返還してもらい現在ファブレ家に飾ってある剣はイミテーションである。
アッシュは暇があれば、というより無理やり暇を作ってはローレライロードを使ってファブレ家に帰省していた。ルークに勉強や譜術を教えるためだとか、剣術の稽古のためだとか言っているが、本音はルークとシュザンヌに会いたいだけではないか、と。いやガイやナタリアにも会いたいとは思ってはいるだろう。優先順位が低いだけで。
アニスも時々アッシュにくっついてファブレ家を訪問した。
ティアも非公式に訪問する時はローレライロードを使用していたが、ナタリアの要請で公式訪問することも度々あった。
ティアとナタリアはルークの治癒術の師匠(せんせい)である。アッシュも時々教わっているのだが、不本意だということがありありとわかる顔だった。それでもルークから教わるよりはマシなのだろう。最初は便利連絡網でこっそり勉強風景を覗いていたのだが、ローレライに盗み聞きしていることをバラされて諦めたのである。アッシュとルークが治癒術を勉強しているのは第七音素を無尽蔵に使えるのは自分たちのみなので、自分が覚えなければいけないと思ってのことだった。


少々マルクト組には不便であったが、逆行組の作戦本部はファブレ邸となった。
バチカルとダアトはローレライロードで直通である。またローレライロードを使わなくてもティアだけは比較的自由にバチカルに出入りできた。ティアとナタリアの友人付き合いはインゴベルトも認めていることであるからだ。
どちらかを選ぶというのであれば、敵の多いダアトよりもある意味治外法権となっているファブレ邸がよいだろう。クリムゾンを追い出した後のファブレ邸はインゴベルトやクリムゾンをどうしても拒めなかった時のために色々な改造―――ローレライの力と創世記時代の技術、ジェイドの譜術、ディストとガイの譜業、ピオニーの実績を惜しみなく使用している―――を施しているためさながら忍者屋敷のような有様だった。隠し部屋や隠し通路は当然標準装備である。
マルクト組への連絡はダアト組が請け負った。
ジェイドとイオンの主治医と患者の関係が公式なものだったので、検閲なしで伝書鳩のやり取りが可能だったのだ。緊急時にはアリエッタの魔物も使用してジェイドをダアトに招くことも可能である。アニスも両親がグランコクマにいるので、両親宛に見せかけて手紙を送ったり、里帰りと称してグランコクマを訪れたりしても、モースたりに怪しまれることはないだろう。
アッシュ、ルーク、ローレライには便利連絡網もあったし、ティアはローレライを召喚して赤毛二人に言葉を伝えてもらうことができたが、直接会えるようになってからはそれらが使われることはあまりなかった。



イオン十二歳の年、予定通り―――というか、かつて同じに―――イオンのレプリカたちが作られることになった。
かつてと違うことは作られたレプリカは三体のみであることと、オリジナルが無事だということである。しかしモースとヴァンには第七音素の不足を理由に成功したのは一体のみ、オリジナルはレプリカ情報採取のショックで死亡と報告しておいた。
イオンのレプリカである三人は予想通り全員逆行していたので、できたでほやほやから自我があった。刷り込みは不要だったがヴァンたちには刷り込みをしたと伝えておけば問題ないだろう。
レプリカイオンやフローリアンは現状を説明され協力を快く承諾。シンクは思いっきり抵抗したが、結局はオリジナルイオンに丸め込まれて協力することになった。オリジナルイオン最凶伝説はここでも健在である(笑)。
レプリカイオンはかつてと同様導師に就任した。預言を詠むことはできるが、身体が弱いので過度の使用は控えるようにと注釈をつけてモースに引き渡したのだが、まぁそれでも無茶をさせるのがモースである。ぶっ倒れたイオンの介抱はアッシュの役目だった。
「彼が傍にいると身体がとても楽なんです」とレプリカイオンはアッシュを傍に置くことを望んだ。不思議なこともあるものだが、そういえばオリジナルも似たようなことを言っていたことをモースは思い出し、そういうこともあるかもしれない、と思った。モースは預言さえ詠めるのであれば細かいことを気にしなかったのだ。なので、導師が入れ替わった後もアッシュは導師付きのままである。特務師団もイオンの私兵のまま据え置かれることになった。
オリジナルイオンはローレライロードを使ってバチカル・ファブレ公爵家へ避難した。一緒に行きたがったアリエッタはイオンの願いでダアトに残ることになった。ローレライロードを使ってファブレ家に入り浸るつもりでいたアリエッタだったが、それはアッシュも同様である。二人はどっちがファブレ家に行くかで毎日揉めてばかりだった。二人揃って不在は目立つだろうし、レプリカイオンの護衛やらヴァンたちの動向の監視やらとダアトでやらなければないことも山積しているので、どちらかは残る必要があったのだ。
フローリアンはジェイドと一緒にグランコクマへ行き、アニスの両親に預けられた。アニスの里帰りの回数が増えたのは言うまでもないだろう。
(アニスはレプリカイオンとフローリアンの間で板挟み状態だった。頑張れアニス! → 解決策は考えていません。自力で頑張ってもらいましょう/苦笑)
シンクはディストに引き取られた。折を見てヴァンにその存在を洩らし、六神将入りする予定になっていた。
「失敗作なので研究用に私が引き取ったのです。何か問題がありますか?」
ヴァンがシンクを受け入れるかどうか、それはすべてディスとの演技力にかかっている(笑)



ヴァンは相変わらずファブレ家への出入り禁止状態にあった。
やたらと自分に協力的なティア―――もちろん演技である―――からルークの状況は教えてもらえていたが、このままではルークに暗示をかけることはできない。
立派な監視者となってしまった―――少なくともヴァンの目にはそう見えた―――ティアに預言にないことをしようとしていることを明かすことはできなかった。預言成就のためと言えば、ルークをアクゼリュスに連れて行くことまでは協力してくれるだろう。しかしそれ以降のことは難しいのではないか。
ファブレ家に復讐のために潜入しているガイの方が己の共犯者には相応しいのではないか。
ヴァンは自分の考えが間違っているとは微塵も思っていなかった。
ガイはヴァンたちの動きを知るために共犯者になったのである。
ファブレを憎むガイの顔が演技であるなんて欠片も疑っていないヴァンに勝機などあるはずがなかった。



預言遵守派―――インゴベルト、クリムゾン、モース―――はファブレ家内の様子、特にルークの状態を知りたがっていた。
ナタリアの出入りは自由だったが、ファブレ家の様子を尋ねてもどこかズレた答えしか返さないので内情を探る上では不向きだったのだ。それは一応ナタリアなりの演技らしいのだが、ナタリアは素でもズレていたので演じなくても問題はなかった。ティアはナタリアと一緒であればファブレ家に出入りできたが、そうちょくちょくバチカルに来られるわけではないので、やはり不十分である。
メイド、コック、執事、家庭教師、警備兵、医者、曲芸師、音楽家、と手を変え品を変えファブレ家へ送り込んでみたがすべてシュザンヌに門前払いされてしまったのだ。
「そろそろ剣術の稽古を再開してはどうだ」という夫と兄の言葉もシュザンヌにより却下されていたので、以前ルークの剣術指南役としてファブレ家への出入りを許されていたヴァンも現在は出入り不可能だった。
そこでヴァンはガイに執り成してもらうことにしたのだ。
ガイはファブレ家でシュザンヌの信頼を勝ち得ていたので、シュザンヌも彼の提案を受け入れルークの稽古は再開されることになった。
ヴァンには恩着せがましく報告しておいたガイであるが、もちろん真相は遥か掛け離れたところにある。いや、ガイは確かに信頼を勝ち得ていたし、シュザンヌがそのガイの提案を受け入れたのも事実であったが、ヴァンのファブレ家出入りを許可したことには裏があるのである。
シュザンヌの態度が軟化した理由を預言保守派が知ることはなかったが、ヴァンを送り込むことができただけでも御の字と彼らがそれを追求することはなかった。もし追求していたのであれば、彼らの勝機も少しは残されていたかもしれないが、今となってはそれも後の祭りだった。
そしてヴァンもまた己の剣術指南役復帰がガイの執り成しのおかげであると信じていた。
「そろそろルークとヴァンの接点を設けもよい頃合かもしれませんね」
それもまた逆行組の計画(遊び)の一部であることを彼らが知ることはないだろう。



ヴァンの指南役復帰を最後まで反対していたのはアッシュである。
ルークは手放しで喜んでいた。
出入りが許されたからといっても、ヴァンにファブレ家内での自由はない。稽古の日は予め連絡しシュザンヌの許可が必要であった。突然訪ねて行っても「今日はお約束の日ではありません」と素気無く却下されてしまうのである。門から家屋までは白光騎士が、屋敷内ではメイド―――メイド姿をしているだけで中身は腕利きの女騎士である―――が付きっ切りである。もちろん玄関、応接室、中庭以外は立ち入り禁止なので、ヴァン来訪時はオリジナルイオンやココにはいないはずのモノたちは隠れて様子を窺っていた。ヴァンが来初めた頃はアッシュもルークを心配し毎回ファブレ家に来ていた。
「殺気を飛ばすなよな。師匠(せんせい)に気付かれたらどうするんだよ」
ルークに叱られ、それでも殺気を抑えることはできなかったため、ヴァンが来ている時はファブレ家に来ることを禁止されてしまった。
ナタリアは欠かさず同席していた。庭の片隅でシュザンヌとお茶しながら―――背後に護衛の騎士を従えて―――見学しているので、ヴァンも滅多なことはできない。ティアも時々同席している。
それでもルークが懐いてくれたからよしとしようなんて、ヴァンは意外と楽観主義者だった。


旅立ちの日まであと少し。
カウントダウンはもう始まっていた。

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