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道化師は微笑う。

TOA中心二次創作サイト。

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【そこにぼたんがあるのだからおしてみるのがにんげんだろう】

苦し紛れの蔵出し企画第1弾。
【そこにぼたんがあるのだからおしてみるのがにんげんだろう】
(2010/03/31公開終了。2012/10/13再掲載)



扉を開ける。机の上を見る。
そこには何故かきっちりプレゼント包装された30センチ四方の箱が一つ、鎮座していた。まぁ騒いでいたら、それはそれで驚いただろうが、後から思うとその方がよかったのではないか、などなどと・・・思わず現実逃避してしまうのは、主人公その1・特務師団師団長鮮血のアッシュ、
15歳。まだまだ素直になれないお年頃である。
さて、そのアッシュの肩越しにプレゼントらしき物を見つけて、嬉しそうに駆け寄るのは主人公その2、その1とすべて同じパーツでできているはずなのに別人にしか見えない彼の副官である。ここでは「補佐官」と呼ばれているが、その名はいわずもがななので、省略させていただこう。是非本編で確認していただきたい。
外見はともかく、精神年齢はそれよりかなり低いと予想される子供は、子供特有の好奇心でもって、果敢にもその物体の開封に挑み始めた。
シュルリと滑らかな音をさせて黒いリボンが引き抜かれる。次は紫色の包装紙だ。
黒に紫。
この悪趣味な組み合わせを見たときに気付くべきだった。
送り主のわからない物体を何故開けさせてしまったのか、と後悔するのは、相変わらずツンデレ属性ではあるが、以前よりデレの割合が大きくなった男・鮮血のアッシュ。実は意外と可愛い物好きであることが判明するまで秒読み開始。彼にとっての可愛い物の定義は彼にしかわからないのだが、今回の対象は万人が認めるところだろう。
さて、リボンは簡単にほどけたが、包装紙の方はそうはいかなかったようである。
箱をグルグル回してみたり、ひっくり返してみたりと忙しそうだ。
包装紙を破るという発想にはいたらないのだろうか?
「中身がわからねぇのに、逆さにしてんじゃねぇ」
つっこむところはそこではない。
何故ここで止めなかったのだろうか?
後から悔いるから、後悔というのだよ。それは反省である。同じ過ちを繰り返さないための教訓であって、なかったことにできるものではないのだよ、と誰か教えてやってください。話が進みませんから。
「天地無用って書いてないし、大丈夫なんじゃない?」
3人目の登場人物はおかしな仮面をつけた緑の髪の少年である。
一番年下なはずの彼が一番落ち着いているように見えるのは気のせいではない。厳然たる事実だ。
「だよな~」
ふぅ、と入り口まで届く程大きなため息をつく。
どうやら包装紙は剥けたようである。きっちり畳んで箱の横に置く。その上のリボンも絡まないように結ばれている。意外と几帳面なのか?
なにがでるかな~なにがでるかな~と今にも歌いだしそうな様子に目を細める二人の前で、子供は箱の蓋を開ける。
現れたのはボタン。
調度拳大ぐらいのそれはなんとも叩きやすそうだ。むしろ叩いてくれといっている。
「待て」
切羽詰った声が上がる。
しかしそんな制止も子供の好奇心の前では無力だ。
振り上げられた左手を捕まえるのと、それが叩きつけられるのは同時だった。
煙の色はもちろん紫だ。
感心すべきはそこではないだろう。
数秒で煙はなくなり、次に見たものは先ほどまでとはまったく違う衣装に身を包んだ子供だった。怒鳴ることも忘れて見惚れていたことは子供には内緒にしておいてやろう。
「似合う」
ぼそりと呟かれた言葉は、幸いなことにその対象人物には届いていなかったが、背後で成り行きを見守っていた人物には届いていたらしい。この件で彼がからかわれるのはまた別の話なので、今回は省略。ついでにどんな格好をしていたかも省略しておこう。無意識に独占欲を発揮している人物がいるので、あきらめていただきたい。他の同席者の存在は彼のなかで綺麗さっぱり抹消されているようである。
「貴様、なんて格好をしてやがる」
「ぶうさぎ」
なんてことだ、当事者がばらしてしまった。これでは内緒にした意味がないではないか。
そう、子供は「ぶうさぎのきぐるみ」を着ていた。ピンと立った右耳とちょっと折れ曲がった左耳のアンバランスが可愛らしい。
ここで気付くべきだったのだ。鏡のないこの部屋で、自身の変化を正確に言い当てたということがどういうことか。
しかし彼がそれに思い当たるのはすべてが終わった後である。
「あの野郎」
地を這うような。年相応とは言い難い声であったが、彼にはよく似合っていた。
誰かが何かを言う前に、勢いよく扉が開き、それから静かに閉まる。
薄いピンク色に黒い斑。わずかな赤い残像を残して走り去った影。
どこに向かったかなどは確認するまでもない。危険はないだろうから放っておこう。いや、一部今まさに命の危機にさらされようとしているかもしれないが、きっとその人物は大丈夫だ。これから何故死なないのかというよりは、死んでなきゃおかしいだろうとう場面を何度も乗り越えていく、ある意味最弱で最強の人物だ。今は、敵だか身方だかよくわからない微妙な立ち位置にいるが、こんなプレゼントをしてくるのだから悪い人ではない。感性がかなりずれていて誤解されることが多いだけである。いや常に誤解されているというか・・・・・・不憫だ。
アッシュが部屋を飛び出していってから数分後、一頻り薄いピンクに茶色の斑をした残されたぶうさぎを眺めて楽しんでいた緑の子供は、封筒らしきものを発見した。
それは蓋の内側に貼られていたようである。
「・・・・・・尚、その衣装は音素の結合力が弱いので10分程で乖離するはずです」
ポンと小さな音を立てて紫色の煙が立ち込める。それは上昇しながら霧散し、後にはいつもの服装に戻った赤毛の子供がいた。
「なんだったんだ?」
「彼なりの気遣いらしいよ。どっかずれてるけど・・・・・・」
顔を見合わせて笑いあう赤と緑。
彼らはまだ本当の首謀者が誰かは知らない。それもまた別の話である。
突然キョロキョロとあたりを見回した赤い子供は、もう一人の赤の不在に気付く。
そういえばさっき扉が開いたような。
「あいつ、あの格好で行ったのか」
「みたいだね」
一方は心配そうに、もう一方はやけに楽しそうだ。
「でもさあ、あれきぐるみだったぜ」
戻らなくても脱げば済むことだったのだ。戻らないと勘違いし、首謀者の元へその格好で廊下を駆け抜けていった目撃情報が報告されるまで、あと数分。
そして報告者は、そこにいる補佐官の姿を確認し、あれが自分たちの団長だったことを知る。
「内緒にしよう」
懸命な判断である。
ついでに補佐官の名前で緘口令が敷かれたことも明記しておこう。しかし人のいい補佐官は、その命令が及ばない人物が自分のすぐ隣にいることを失念していたのである。
誰がどんな格好で廊下を走り抜けたのか知れ渡るのも時間の問題だった。


一方、同時刻別の部屋で。
伺いもなく開け放たれた扉。
「意外ですが、貴方もよく似合っているじゃありませんか。さすが私です」
その一言で、彼は自分ももう一人と同じ姿に変わっていたことに初めて気付くのである。同時に自分の行動を振り返り青ざめ、行き場をなくした思いは、怒りと共に製作者に向けられる。
断末魔の叫びが教団内に響いたのは、秋晴れの空が高い日の午後のことだった。


最初に取り扱い説明書を読んでいれば。
きっちり使用上の注意を理解させておけば。
後から悔いるから、後悔というのだよ。それは反省である。同じ過ちを繰り返さないための教訓であって、なかったことにできるものではないのだよ、と誰か教えてやってください。



 


あとがき(とういう名のセルフつっこみ)

テーマは「取説はよく読みましょう。間違った使用方法による被害は補償しかねます。それでも逆恨みされるのだろうなぁ~。世の中って理不尽だよ。裁判すれば勝てるかもしれないけど、それも面倒だよな」です。
一番悩んだことが「赤毛二人の変身後の姿」だったり。
うしにん・ねこにん・女装・女体化・・・・・・過酷な脳内バトルの結果採用されたのは、「ぶうさぎのきぐるみ」でした。
字書きなので、台詞を少々変換して、その後の状況描写を書き換えればいいだけなのに(涙)
アッシュの独占欲を理由に未定にしようとしていた名残が・・・それもあの一言で霧散しましたけど。なんてことをしてくれたんだ!→アッシュ!
後はディストを表す色、ですね。ピンクか紫で悩んだ結果、勝者紫。ピンクはアリエッタだろう、っていうのが紫の勝因でした。
っていうか、明記しませんでしたが製作者が誰かはわかりましたよね。アッシュ以外の名前を出さないようにしたのはわざと、です。
あの「ぶうさぎのきぐるみ」を用意したのは誰か。
あの部屋には実は4人目の影が……(と書いてあったのですが、きっぱりすっぱり思い出せません/この括弧内のみ本日追記)

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