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道化師は微笑う。

TOA中心二次創作サイト。

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『知らぬは~』過去編⑩


念願のローレライロードか開通し、ナタリアとガイにその存在がバレたアッシュは、気兼ねなくファブレ家に入り浸っていた。
そんなある日、シュザンヌに二人でいるところを見つかってしまい、誤魔化しようがないと悟ったアッシュは、彼女にルークがレプリカであることや預言の真実をぶちまけることを選択した。彼女は王族ではあったが、それ以上に母親だった。アッシュにもそれがわかっていたからこその選択である。それでも自分たちが人生を繰り返していることまでは言わなかった。もっともこれは単に説明が面倒だという理由に過ぎない。
最初こそ混乱していたシュザンヌだったが、色々思い当たることもあったのだろう。
夫と兄に激怒。その結果どうにかしてファブレ公爵を屋敷から追い出せないものかと、彼女の天秤は夫よりも息子の方が重かった。それでも離婚ではなくて別居を選択するあたり、怒ってはいてもまだ愛情は残っているのだろう。離婚を選ばなかったのは王族の離婚が簡単ではないから、なんてそんな理由ではないと思いたい。特に公爵のためにも。
その日も公爵が留守なのをいいことにシュザンヌはアッシュを呼び寄せた。もちろんアッシュに否などあるはずはなく、朝からダアトの自室にしっかり鍵を掛けてバチカルを訪れていた。表向きは具合が悪いということにして。
「面白そうな相談をしているね。そういうことなら僕が何とかできると思うよ」
公爵の目を盗み公爵を追い出す理由を相談していたアッシュ・ルーク・シュザンヌ・ガイ・ナタリアの五人は、六人目の声にギョッとして振り返った。
クローゼットから出てきたのは緑の髪の少年だった。
「導師・・・イオン」
彼の顔に直ぐに思い当たったのはアッシュのみである。
ちょくちょくダアトから姿を消すアッシュをいぶかしみ、イオンはアッシュの後をつけルークのクローゼットに潜んでいたのだ。当然今までの会話はすべて盗み聞きしていた。
夫婦喧嘩程度では一日二日追い出すことができたとしても、クリムゾンを完全に屋敷から追い出すことは難しそうだった。特にルークの誘拐騒動があった後であれば尚更である。かといって他にいい手も思いつかず頭を悩ませていた人々にとって、イオンの発言は光明であると言えよう。イオンに知られてしまったことなどどうでもよくなるぐらい、彼らはこの発言に食らいついた。
預言を詠めばいいと、イオンは言う。
「光の都の焔を絶やさぬために、王家に連なる男、南西へと旅立つ。その地を守り抜くことで、約束の日まで焔は光の都を照らし続けるだろう」
詠うようにイオンは言葉を噤む。それはあたかも本物の預言であるかのようだった。
イオンの言葉は誰の耳にも『ルークを守るためにクリムゾンはベルケントを守らなければならない』とそう聞こえるだろう。特に預言信奉者であれば尚のことである。そして国王も公爵も間違いなくその預言信奉者であった。
今のイオンの言葉を預言として伝えればいい。後は勝手に判断し勝手に居住を移してくれるだろう。
唯一不安があるとすれば、この預言は捏造されたものであるから譜石が存在しないということだった。譜石がなくともイオンがこんな嘘を吐く理由に思い当たる節はないはずなので疑われることはないと思うのだが。
「彼らなら道端に落ちていた小石でもありがたがるだろうね」
まったく、大した導師様である。
しかし本当にそこらで拾った石を譜石と偽るわけにはいかなかった。譜石の状態であれば第七譜術士でなくとも解読可能であるということは、この第七音素の減少した世界であっても読めるということである。
「その件に関しては俺に心当たりがある」
「アッシュ?」
「ヤツならどうにかできるだろう」
できないと言ってもやらせる気満々である。
「そうか」とルークが満面の笑みを浮かべて頷く。ヤツがローレライのことであると気付けるのはルークだけだった。
譜石を捏造する技術がどういうものかはわからない。それでもローレライロードの存在を知るモノたちにとって、自分たちの知らない技術を持つ協力者がいることは信じられることだった。
イオンが立ち聞きしたのは公爵を追い出すための作戦会議のみである。この時点ではルークがアッシュのレプリカであることは知られてはいなかった―――イオンがレプリカという存在を知るのはもう少し未来の話である―――ので、アッシュは公爵によりファブレ家から追い出されダアトに預けられた子供で、母や弟―――兄には見えないのでルークの方が弟だろうと想像とイオンは思っていた―――は公爵を追い出してアッシュとここで暮らそうとしているのだと思い込んでいた。イオンのこの想像は概ね正しいといえるだろう。



預言の効力は絶大だった。
このルークの部屋で行われた秘密の会合から数日後、クリムゾンがベルケントへと移り住むことが正式に発表された。
夫に詠まれた預言を知ったシュザンヌは、白光騎士団全員を連れて行くように公爵と王に進言した。半数はバチカルに残すつもりでいたクリムゾンであったが、「バチカルよりもベルケントを守るべきであると預言に詠まれているのでしょ」と言って全員連れて行かせることに成功したのである。
「ラムダスもお連れください。貴方に屋敷のことを取り仕切れるとは思いませんので」
ラムダスも押し付けて、シュザンヌによるファブレ公爵家の大掃除は無事完了した。
ファブレ公爵家に残された使用人は、シュザンヌが信頼する数名のメイドとガイとペールのみだった。他に適任者がいないので執事職はメイド長が代行していが、これは後にガイの仕事となる。
女と子供と老人だけでは危ないと、夫と兄が色々送りつけてくるがシュザンヌはこれをすべて却下した。どう考えても夫や兄のスパイでしかないものをどうして受け入れることができるだろう。
懲りずに警備兵を送りつけてくる夫と兄の「屋敷の警備が手薄だ」という言い分は確かに事実だったので、シュザンヌは自身で新しい騎士団を編成した。新白光騎士団(仮)の団長に就任したのはジョゼット・セシルである。
自分が知らないことが起きていることに、ジョゼットは困惑していた。その前に自分が過去に戻っているらしいことに困惑したのだが、それをどうにか乗り越えて、戻ってしまったのなら調度良いから色々変えてしまおう、と開き直ったところだったのだ。自分の他にも未来を変えようとしている人間がいるのではないかと考えたジョゼットは、自らシュザンヌの元へ出向いたのである。かつてセシル家再興のためにクリムゾンに直訴した時よりも余程緊張していたとジョゼットは思う。
シュザンヌがジョゼットを選んだのは、ルークやナタリアが「彼女がいい」と言ったからだった。この時はまだはジョゼットも逆行仲間であるとは知らなかったのだが、結果としてその選択は最良だったと言えよう。
団員はすべて女性である。彼女たちが甲冑姿で警護することはなく、ほとんどが軍服姿、中にはメイド姿の者さえいたが、その実力はクリムゾンがベルケントに連れて行った白光騎士団たちに勝るとも劣らないものだった。
屋敷内に男はルークとガイとペールのみである。ガイの女性恐怖症はきっと悪化することだろう。
屋敷内が女性だらけなのはガイ苛めではないはずである。女主人と子供しかいない状態の屋敷内に使用人とはいえ男がいるのはまずいのではないかと配慮してのことである。ガイはこの当時まだ子供であったから、ペールは老人なので、男子禁制からの男子から除外されたようである。



アッシュとティアとアニスが鉢合わせした場所は神託の盾(オラクル)本部だった。
互いに逆行していることは知らなかったのだが、ティアがこの時期にこの場にいるのはおかしいことからアッシュとアニスはティアが逆行していることに気付き、アッシュが導師付きをしていることでティアとアニスはアッシュが逆行していることに気付いたようである。
しかしアッシュとティアはアニスが神託の盾騎士団に入った時期と導師守護役になる以前の経歴を知らなかった。なので、二人とも疑ってはいたが確証を得ることができないでいた。
先に行動を起こしたのはアニスの方だった。
時と場所は選んで欲しいと思うアッシュとティアだった。アッシュとティアが共にいたのはお互い確信があったので情報交換をしていたからなのであるが、近くにイオンがいるにも拘らず、二人が一緒にいるところにアニスが突撃してきたのである。
「三人は知り合いだったんだね」
三人は互いをよく知っているようではあるが、アッシュが少女たちに好意を持っているようには見えない。少女たちの方もまた然りである。三人の関係を面白がったイオンはティアとアニスを特務師団に任命。
モースとヴァンは反対しなかった。
モースはアニスを自分の手駒だと認識していたので、導師の動向を探るのに調度良いとさえ思っていた。金さえ積めばなんでもやる守銭奴である、と。懐は痛んだが、それに見合った働きをする者であると、と。アニスに対するその認識は概ね正しい。しかしどんな大金を積まれても譲れない一線がアニスにもあることをモースは知らなかった。
ティアも色々言い包めて兄の信頼は勝ち取っていたので「導師とあの赤毛の男の子のことがそんなに気になるのなら、私が探ってきてあげるわ」と言って兄の許可を取った。
導師勅命なのでモースとヴァンの許可など必要ないのだが、円満であることに越したことはないだろう。
三人はアニスからジェイドとアスランが、アッシュからルークとガイとナタリアとジョゼットが逆行しているということを知る。
何人巻き込む気でいるんだ、ローレライ。
アッシュは自分の与り知らぬところで増えていく仲間の存在が頼もしくもあり、また疎ましくもあった。ちなみに疎ましい理由はルークの独占が危ぶまれるからである。
ティアはローレライからヴァンに大譜歌を詠わせないようにしろと厳命を受けていることを明かし、アニス自身から喉に良くない料理や飲み物のレシピを、アニス経由でジェイドとディストから怪しげな薬を入手した。
この日からヴァンが飲む紅茶の味が変わったのだが、ヴァンがその理由に気付くことはなかった。



アッシュからジェイド、ティア、アニスも逆行していることを聞いたルークたちは彼らに会いたがった。
ルークは外出不可なのでローレライロードを通じてこっそりファブレ家で会ったりしていたのだが、「公式に接点を作った方がよろしいのではなくて」とナタリアが提案。ダアトを表敬訪問しティアとアニスと知り合うというシナリオを作成。ナタリアの本音はアッシュのダアトでの働きぶりを一度ぐらい見たいというだけである。
ともかくダアトを訪れたナタリアは、大人たちが難しい話をしている間暇だった。
「退屈ですわ。どなたか教団内を案内してはいただけませんか? あら、あの子がいいですわ。ちょうど年も同じぐらいのようですし」
偶然を装って案内役にティアを指名。
キムラスカの王女の公式訪問なので当然アッシュはヴァンにより軟禁中か、適当な命令を受けてダアトを離れているか。ナタリアの真の目的が果たされることはなかった。現在のアッシュはイオン付きだったので、キムラスカの使節団と接触しないようにヴァンが仕組むのは色々と大変だったことだろう。
さてナタリアにはもう一つダアトに行きたかった理由があった。
ラルゴの存在である。
ナタリアはラルゴに対しては色々複雑な思いがあった。
「まずは会ってみなければ何も始まりませんわ」
彼女は意外と行き当たりばったりな性格だった。
「ラルゴに、いいえバダックに聞かなければならないことがあります」
ティアの案内で教団内の見学という名の捜索をし、途中アニス合流するところまでは予定通りだったが、結局ラルゴには会えないまま一回目のダアト訪問は終了した。
その後もダアトを表敬訪問する機会を設けたが、一度としてナタリアがラルゴと出会うことはなかった。
ラルゴが逃げ回っていたのか、ヴァンの差し金か、たぶんその両方なのだろう。
ナタリアの友人という立場を公式でも手に入れたティアは、度々バチカルを公式訪問するようになった。
ナタリアの紹介もあってファブレ家に出入りするようになったのだが、これをインゴベルトが許可したのはナタリアの懇願だけでなく、ファブレ家の内情を知りたいヴァンやモースの口添えがあってのことだった。
ティアはヴァンたちに対してはルークの様子を探っていますという顔をしているが、もちろんヴァンに提出する報告書は捏造満載、嘘八百である。



【ラルゴに関する考察(ゲーム本編とキャラクターエピソードバイブルを読んで思うこと)というか、逆行ナタリアが何を思っているのかを捏造中】
バダックがメリルを取り戻そうとしたのは一度だけでバチカル追放後は復讐に生きる。奥さんを愛していたのね、で片付けられてはナタリアがかわいそうな気がします。
バダックってばメリルを諦めるのが早すぎはしませんか?
預言に逆らう道を選んだ男が、何故国の決定に従ったのか? バチカルに入る術がなかったからなんて理由になるのでしょうか? たとえなったとしてもボランティアと称してふらふらしているナタリアならばバチカル以外のところで接触すればいいだけだと思うのですが。
ゲーム本編中でラルゴはヴァンの計画をどこまで知っていたのでしょうか?
「預言のない世界を作る」ぐらいだと思いたいのですが、レプリカと挿げ替える計画まで知っていて協力していたのだとしたらイヤだなぁ~と。
つまりオリジナルのナタリアを殺してレプリカのメリルを・・・・・・
ナタリアとしてはやりきれないでしょうね。
憎い男を父と慕うナタリアなんて自分の娘のメリルではない、とラルゴが思うのも仕方がないのかもしれませんが、オリジナルよりレプリカの方がいい、なんて。
ナタリアがラルゴとの親子関係を知るはゲーム後半ですし、逆行ナタリアにはレプリカを蔑む気持ちなんて欠片もないですが、それでも自分よりもレプリカの方がいいと言われて黙っているわけにはいきません。
いやラルゴが言ったわけではないのですが、思い込んだら一直線といいますか、思い込みが激しいのがナタリアの良いところ(ん? 悪いところなのか)。
なので、実の父であっても、いえ実の父であるからこそこのナタリアは容赦いたしません。



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