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道化師は微笑う。

TOA中心二次創作サイト。

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『知らぬは~』過去編⑥


まずはアッシュの物語から始めよう。

ダアトに連れてこられた直後は神託の盾(オラクル)騎士団の地下牢に幽閉状態だった。
それはかつてと同じで、こんな年端もいかぬ子供を牢に閉じ込めることに関し、他の神託の盾兵は何も言わないのか、今ここにアッシュがいることはヴァンとその息の掛かった者しか知らぬことなのか。たぶん後者なのだろう、と冷たい石畳の上でアッシュは思う。
今ごろルークは暖かな部屋、柔らかなベッドの上だろうか。
以前はそれが憎くてたまらなかったというのに、今はそれが何よりも嬉しい。
身体は確かに地下の冷たい空気や石畳の硬さを感じているはずなのに、心はどこまでも暖かだった。
これはルークの感覚であり、思いだ。
バチカルの屋敷に戻ってこられたことへの安堵。生まれてから七年間、そこはルークの世界のすべてだった。辛い思い出がないわけではなかったが、何よりも大切な場所であることに変わりはない。
その安心感が、帰ってこられて嬉しいという思いが溢れてアッシュにまで届いているのだろう。
そして同時に伝わる、それと同じだけの寂しさ。
まるで陽だまりに落ちた影の中にいるようだ、と。
不完全な陽だまり。足りないのだ。アッシュが―――。
ここにアッシュと二人で帰るのだ、と。その時が本当の帰還。頑張るから、と。
絶え間なく伝わるルークの思いは何よりもアッシュを優しく包んでいたから、実際の冷たさなど感じようがなかった。
離れていようともルークの思いはアッシュを守る。
ならばアッシュも同じものを、いやそれ以上のものを返さないわけにはいかなかった。そう考えて、ふと思う。
―――おい。
心の内の呼びかけに、応(いら)えは直ぐに訪れた。
ルークとの回線を繋いで欲しいのなら可愛らしくお強請りしてみせろ、なんてふざけたことを言ってきたので思わず意識の外へ追い出そうして、呼び出したのが己であることを思い出す。
確認しておかなければならないことがあるのだ。
自分が今置かれている状況をルークに知られてはいまいか、それがアッシュの気がかりだった。こうなることをアッシュは半ば覚悟していたがルークには伝えなかったのだ。ルークが知ればアッシュを行かせはしなかっただろう。
ローレライの監視の目を掻い潜って伝わってしまうのは大まかな感情だけである、と。アッシュの心の中にルークがいる限り、アッシュからルークに流れる感情に伝わっては困る素養が混ざることはないだろう。いや別の意味では受け止めることが困難というか、恥ずかしくなる内容ではあったのだが、賢明なことにローレライがそれを指摘することはなかった。指摘しなかったのではなくて、ただわかっていないだけなのかもしれないが。
―――貴様はルークの方が大事だったな。
「は」ではなくて「も」だろうなんて、野暮な突っ込みはしてはいけない。
同じローレライの同位体であったとしても、第七音素のみで構成されているルークの方により親しみを感じるからなのか、それともローレライを解放したのがルークだったからだろうか。どんなにルークがアッシュの助力があったからだと言ったところで、実際にローレライを解放したのはルークだったことは違えようのない事実だった。
ローレライにとってはどちらも大事な同位体。自身と同じ存在である。それでもギリギリのところでなされる優先順位はルークの方が上だ。
二人の意見が対立した場合わずかではあるが天秤はルークに傾く。しかしそれはルークの意見を優先させるという意味ではない。
一言で言えば過保護。
アッシュはその取捨選択の基準が自分とよく似ていることを忌々しく思いながらも、心のどこかで歓迎していた。
ルークの不利になることはしない、負担になるようことはしない、悲しむようなことはしない。
それはローレライとアッシュに共通する思いだった。
時々、いやしょっちゅうその思いが空回りしてはルークを怒らせたり、拗ねさせたり、悲しませたりすることになることに、二人はまだ気付いていなかった。気付いたところで改善できるような二人ではなかったが。



地下牢の警備はかなり杜撰なものだった。かつて本当に子供だったアッシュに抜け出すことが可能だったのだからかなりのものだといっていいだろう。
今ならことはさらに簡単だ。
しかしアッシュは牢を抜け出しバチカルに帰ろうとはしなかった。
花畑の中で無邪気に微笑むルークを見たくないわけではなかったが、見てしまった場合ルークの前に飛び出さずにいる自信がなかったからだ。
アッシュが傍にいないルークに無邪気に笑うことなどできはしないということを失念しているあたり、アッシュらしいといえばらしいのだが。
ダアトに連れて来られてからのアッシュは「ここから出せ」などと騒がず、慌てず、ほぼ一日中ボーっとしていた。牢の中ではこれからのことを頭の中で繰り返しシミュレーションするか、ルークと意識を繋ぐぐらいしかやることがないのだ。シミュレーションの内容がローレライロード開通に関することに偏っていることや、考え事をしている時間よりもルークと繋がっている時間の方が長いことを指摘することができる唯一の存在―――ローレライのツッコミもなかったことはアッシュにとって幸運であった。
しかしヴァンにしてみればそれでは張り合いがないというか、地下牢に閉じ込めて精神的に参ったところを救い上げて仲間に引きずり込もう、と画策していただけに拍子抜けもいいところだった。
バチカルにいるレプリカの様子を聞かせても激昂するわけではなく、無表情、いや口許に笑みが浮かんだように見えたのは気の所為だろうか。普段の表情はしかめっ面で固定のようだが、時々ククッと押し殺したような笑い声が聞こえてくることもあると看守はヴァンに告げた。
アッシュは下手に暴れて監視の目が厳しくなるもの困るし、早くここから出てローレライロードを拓くための場所を確保したいためにおとなしくしていたのだが、逆効果だったようである。
脱走してバチカルに帰り両親とナタリアがレプリカルークをルークとして扱う姿を見て絶望しヴァンのもとに下る、というかつての過程を踏襲しないため神託の盾騎士団に入団する切欠がないのである。
ヴァンはアッシュを仲間に引きずり込む―――利用するために絶望を与えたかったのだが、地下牢に閉じ込めバチカルのルークの様子を聞かせるだけでは難しいことを悟った。それどころかアッシュの精神が壊れかけているのではないか、と思う。いっそうのこと壊れてしまった方が都合がよいだろうか。しかしそれで求める力が失われてしまうことはないだろうか。
ヴァンはアッシュをこのままここに置いておくべきではないと判断した。
牢から出され連れたアッシュが行かれた先は導師イオンの自室である。
そこで待ち構えていたのは導師に就任したばかりの被験者(オリジナル)のイオンと、大詠師モースだった。
ND2018の預言を教えればアッシュが預言を憎むようになるだろうとヴァンは考えたのだ。秘預言の内容を教えてしまうことには不安もあったが、背に腹は替えられない。己の計画にアッシュの存在は不可欠なのだ。
モースはヴァンが導師に秘預言を求めたと聞きつけ、無理やり同席したようだった。預言が上手く詠めなくなる預言士たちが続出していたため、導師に預言を詠む力があるかどうか確認したかったのだろう。
「導師イオン。我らに預言をお与えください」
「その子供の預言を詠めというのか?」
自分だって子供じゃないか、という指摘ができる雰囲気ではなかった。
さすがは導師、と言ったところだろうか。導師にはまだ預言を詠む力が残っている。しかし預言を上手く詠むことができない預言士たちが増えて以来、導師が自ら預言を詠むのは高額な寄進をした者か各国の有力者に限ったことだったので、ただの子供の預言を詠めと言われ承諾するはずない。
ヴァンにもそれはわかっていた。最初からそんなことを望んでいたわけではないのだ。
「こちらを」
ヴァンが差し出したのは小さな譜石の欠片だった。導師であれば小さな欠片からでもその預言の全文を詠むことができるのである。
「それは第六譜石の一部です。どうか我らにND2018年の惑星預言をお聞かせください」
何故その年に拘るのか、そう尋ねることもできた。しかしヴァンが本当のことを話すとも思えなかったので導師は無駄な質問はせず、朗々と預言を詠み上げたのだった。
「ND2018。ローレライの力を継ぐ若者、人々を引き連れ、鉱山の街へと向かう。そこで若者は力を災いとし、キムラスカの武器となって街と共に消滅す。しかる後にルグニカの大地は戦乱に包まれ、マルクトは領土を失うだろう。結果キムラスカ・ランバルディアは栄え、それが未曾有の繁栄の第一歩、と、な・・・る・・・・・・」
見る見る蒼褪めていく顔色。荒れる息遣い、声は途切れ掠れていく。揺れる身体。
危ないとアッシュが思ったのと、導師が倒れたのはほぼ同時だった。
体内に貯蔵していた第七音素を使い果たしたことが原因だったのだが、ちょうど最後まで詠み終えたところだったことが幸いし、それに気付く者はなかった。
ニヤリとヴァンの口角が上がった。
これでアッシュは預言を憎むようになるだろう。預言に従うことをよしとした祖国を、人間を憎むようになるだろう。
自分がそうであったから、アッシュもそうであるとヴァンは単純にそう思い込んでいた。
導師やモースがいるためアッシュの真意を今ここで聞くことはできない。しかし導師が預言を詠み進めるにつれアッシュの眉間に皺が寄るのを見て、ヴァンは満足そうだった。少なくとも預言に好印象を抱いてはいないだろう。
アッシュが不機嫌なのはアクゼリュス崩壊時のルークのことを思ってしまったからだったのだが、ヴァンは自分の都合の良いように解釈していた。
うっかり自分の世界に入り込んでしまったヴァンと、導師にまだ預言を詠む力が残っていたことに満足しているモースにとって、現在の導師がどのような状態にあるかは意識の外だった。床に叩き付けられる寸前で導師を受け止めたアッシュは、身動きできそうにないことを悟りベッドへと運ぶ。
アッシュに触れられたところから暖かな何かが流れ込み、倒れるほどに重かった身体が軽くなるのを導師は不思議な思いで感じていた。
気絶していたのはたぶん数秒のことだ。意識を取り戻した導師はアッシュに支えてもらいながら重たい身体を起こし、心ここにあらずといった感じの大人二人を冷ややかな目で見つめる。
大人たちの態度は、預言を詠む能力しか必要とされていないと導師に悟らせるには充分だったのだ。しかしそんな扱いを許しておくような導師ではない。
「この子は誰?」
尋ねられたヴァンは言葉に詰まった。本当のことを言うわけにはいかないのだ。
「最近ダアトに来たばかりの団員見習いの子供です」
苦し紛れの言い訳に導師は内心で大爆笑である。
(子供だと思って油断しているから、こういう目に遭うんだよ)
ヴァンが何か隠していることは明白だった。ただの子供に秘預言を教える理由を聞いてやろうかとも思ったが、それよりもヴァンがアッシュを必要としているならば奪ってやろうと考えるぐらいには、導師は強かだった。
「ふ~ん。じゃぁこの子、僕付きにして」
言い方はお願いだけどその実は導師勅命である。お飾りだと思っていても導師は導師。ヴァンには従わないわけにはいかないだろう。
赤い髪に翡翠の瞳の子供。モースはキムラスカ王家縁の者だろうとあたりをつけていた。しかし本物のルーク・フォン・ファブレだとは微塵も思ってはいなかった。ユリアの預言に詠まれている要の存在。それがバチカルのファブレ家に戻ったという報告を国王直々に受け安堵したのはつい最近のことである。なので、王族の誰かのご落胤。表に出せない子供だろうと推察していた。ヴァンがバチカルのファブレ公爵家に出入りしていた関係で、ダアトで預かってくれるようにとでも頼まれたのだろう、と。キムラスカ王家との繋がりはモースも欲していたのでアッシュのことを深く追求し墓穴を掘るようなまねをするつもりはなかった。そしてどうせダアトで飼い殺しだろうから、導師が欲しいというのならくれてやればよい、と反対することもなかった。
ヴァンは現時点で導師に逆らうのは得策ではないし、導師付きになったところでアッシュには何もできないだろうからと、渋々ではあるが承諾した。
(いや、考えようによっては好都合かもしれないな)
導師はめったにダアトの教会から出ることもないので、アッシュの自由を奪う良い口実になるかもしれない、と。どこまでも自分本位な考え方である。シナリオはヴァンにとって最悪の事態へと進んでいたが、この分なら最期の瞬間までヴァンがそれに気付くことはないだろう。
アッシュは私室を得ることができるのならば所属なんてどうでもよかった。
導師がアッシュを欲したのはヴァンへの嫌がらせが半分、残りはアッシュ自身に対する興味だろうか。傍に置いておけばその不思議な力が何であるかわかるかもしれない。少なくともアッシュの力は自分にとって益になると、あの僅かな接触で理解していた。
しかしそのことを知らないヴァンとモースは、導師と言っても所詮は八歳の子供。同年代の友人が欲しかったのだろう、ぐらいにしか思っていないようだった。
(ただの子供と侮るなよ)
奇しくもアッシュと導師はまったく同じ思いを抱いていた。



翌日からアッシュは導師付きとなった。任務は導師守護役(フォンマスターガーディアン)と大差ないのだが導師守護役の所属兵は女性のみが決まりなので、導師守護役ではなく特務師団という新たな師団が導師の鶴の一声で新設された。たった一人の師団である。直属の上司は導師で、他の人間、ようするにヴァンやモースの命令に従う必要はないと導師が請け負ったため、ローレライ教団と神託の盾(オラクル)騎士団内限定であったが、アッシュは自由とそれなりの権力を得ることになった。念願の私室も導師の私室の近くに与えられた。
しかし地位や権力などアッシュにはどうでもよいことだった。これでローレライロードを拓くことができると、結局アッシュの希望はその一言に尽きるのである。



(ゲーム本編に対する管理人のツッコミ → 男性の導師に女性だけの守護役って色々不都合がありそうだと思うのですが、やっぱり守護役はお飾り? 導師の周りを若い女の子で固めた方が見栄えがいいから、とかか? それならゲーム本編でのアニスの無能っぷりも・・・/以下略)


【このネタ限定の捏造設定】
特務師団はオリジナルイオンがアッシュを自分付きにするために作った師団である。なので、設立当初団員はアッシュのみ。その後アッシュとオリジナルイオンが使えそうな人材をスカウトし最終的に三十人ほどになる。すべてオリジナルイオンの私兵だった。ヴァンやモースは導師が自分の遊び相手を集めて師団を名乗らせていると思っているので、その実力に気付いてはいない。団員数が二桁になったころからアッシュは師団長と呼ばれるようになる。アッシュが師団長になったのは自然発生的なものだった。
かつてアッシュが監禁されていた時間はもう今回よりも長期に亘っていた。監禁を解くに当たってアッシュの監視を目的にヴァンが設立したのが特務師団である。アッシュが師団長なのはお飾りで直属の上司はヴァンだった。どちらも名称が「特務師団」だったというのはただの偶然か、それとも預言の導きだろうか。
(ということにしておいてください。ゲーム本編での真実ってどうなっているのだろう)



導師はアッシュに接触したことで自分に第七音素(預言を詠む力)が戻ったことを知ったが、その仕組み―――ローレライがアッシュに協力していること―――まではわかっていなかった。しかし自分に預言を詠む能力しか求めていない周囲に辟易していたので、アッシュがいれば以前と同じように預言を詠むことができるかもしれないと言うことは周囲には内緒にしていた。
相手に触れることで第七音素を供給できるということはアッシュも知らなかったことだ。最初の時は倒れた導師を心配して無意識に第七音素を供給したようである。
その後ローレライからその仕組みを説明され、供給するかどうかはアッシュの意思に委ねられていることを知り、ほっと胸を撫で下ろした。
こちらの意志などお構いなしに持っていかれるなど冗談じゃない。
現在のアッシュはローレライとフォンスロットで繋がっているため第七音素が過剰気味だった。そのため余った第七音素を相手に触れることで分け与えることができるようになったのだが、助けたいとか与えたいとか思わないと無理だったので、もし知られたとしても利用されることはない。それでもヴァンやモースにはバレたくないと思うのが正直なところである。
アッシュに可能であるという事はもちろんルークにも可能だということだった。しかしルークにそれを教えてしまうと誰彼構わず与えてしまうのではないかと思うのは、けっしてアッシュの気のせいではないだろう。
今はまだいい。ファブレ公爵家内でルークが預言士や治癒士と接触する機会などめったにないはずだ。特に両者が無力と化した今の世界であれば皆無といっても過言ではないだろう。
「いいとこ、ナタリアだけか」
ナタリアはギリギリアッシュの許容範囲内にいた。
いずれどうにかしなければならない問題ではあったが、現時点では放置しておいても問題ないと結論付けたアッシュは、ローレライロード開通を優先させることにしたのだ。
自分が傍にいれば解決する問題である、と。
その認識は間違いではなかったが、果たしてアッシュの望み通り四六時中傍にいることなど可能だろうか? その答えが出るのはもう少し未来(さき)の話である。



アッシュとの初対面以来、導師は預言を詠まなくなった。
詠めないではなく詠まないのだということを知らないモースは、預言の詠めない導師は必要ないと考えるようになった。
ヴァンは年々扱いづらくなる導師に、自分の計画に利用するのは難しいのではないかと危惧していた。
その結果ヴァンとモースが結託。導師のレプリカを作るという計画が浮上したのである。
その一方で、イオンは好奇心に負け詠んではいけないとされる自身の預言を詠んでしまい、自分が十二歳で死ぬということを知ってしまう。預言と世界に絶望し憎み出したイオンに、アッシュは「預言は絶対ではない。覆すことができるのだ」と言うが、イオンは信じようとはしなかった。
アッシュの知る二人の名医―――ベルケンドのシュウ医師とマルクトのジェイド・カーティス―――を密かに招集し診てもらったが、現時点ではイオンに死の兆候は皆無だった。少なくとも病死や寿命で死ぬとは考えられない、と二人の医師の診立ては同じだった。
それが彼にとって幸運だったのか不運だったのかはわからないが、ローレライに依って「みんな」に分類されていた男―――ジェイド・カーティスは被験者(オリジナル)イオンの死はレプリカ情報を抜いたことが原因ではないかという仮説を立てた。
預言で自分の死を知り、レプリカを作らせることにし、レプリカ情報を抜いた副作用で死亡。預言成就となったのではないか、と。
鶏と卵はどちらが先なのだろうか?
死の預言に絶望しレプリカを作ろうと考えなければ、イオンは死なずに済むということになるのだが、今回はイオンの意志とは関係なしにモースとヴァンがレプリカイオン製造計画は遂行している。
アッシュとジェイドは「ルークは(レプリカ)イオンに会いたいだろうな「でしょうね」」とか被験者イオンに内緒でこっそり思っていたし、ローレライの独断と偏見による「みんな」認定を受けていそうな予感もあったので、「レプリカを作らなければ導師は死なない」という仮定は仮定のまま証明されることはなかった。
「仕方ありません。安全にレプリカ情報を抽出する方法を授けてきましょう」
自分がルーク誕生時からやり直しをしているらしいと気付いたジェイドはフォミクリーの研究を再開していた。目的はもちろんルークを救うためだったが、思わぬところで役に立ちそうである。ついでにディストはマルクトのスパイである。ディスとにはかつての記憶はなかったが、ジェイドが色々した結果再びマルクトに寝返ったらしい。まぁディスト的に今回の方が幸せだと思うが・・・・・・色々不憫なヤツである(苦笑)。
導師のレプリカが作られるのはかつてと同様に導師が十二歳になってからとした。導師の安全確保のためにももう少し研究したいということもあったが、あまりかつてと変えてしまうことに不安もあったからだ。急かすヴァンとモースには「レプリカを創るのに必要な第七音素を集めるのにもう少し時間が掛かる」とか言っておけば誤魔化せるだろう。実際に創る時にはアッシュ経由でローレライから搾取するつもりでいるので、第七音素を集めているのはふりだけである。
預言に詠まれたことだからと必ず実現するわけではない、ということを導師が信じたがどうかは現時点では謎だった。病死や寿命はありえないという言葉は信じたようだったが、レプリカを作ろうとしていることを秘密にしているため事故死や暗殺を疑っていた。
モースやヴァンにとって預言を詠めない導師など邪魔なだけということか。
事故や暗殺ならばアッシュや導師守護役(フォンマスターガーディアン)たちが頑張れば回避できるかもしれないと、預言で死に対する警告が出たのであれば気をつければいいのだと、イオンの預言に対する考え方はこの時より少しずつ変わっていった。
単純だな、と思わないわけではない。いくら聡くても十歳前後の子供の考えを変えることなど人生二回目のアッシュや頭の良さは万人が認めるところのジェイドには簡単なことだった。
オリジナルイオンがレプリカイオンたちのことを知るのはもう少し先の話である。
自身のレプリカが作られる前にアッシュのレプリカであるルークの存在を知った導師は、自分のレプリカが作られることを快く了承するのだった。むしろ面白がっている節があるように感じるのはきっと気の所為ではないだろう。



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