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道化師は微笑う。

TOA中心二次創作サイト。

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『知らぬは~』過去編⑤


 「ここでお別れか、次に会えるのは七年後、だな」
ルークは無理して笑おうとして失敗した。
ローレライはルークの涙に弱かった。
「便利な装置があるではないか」
ローレライが悪戯っ子のような笑みを浮かべた。(見た目だけ)人間になってから数時間しか経っていないのが信じられないぐらい人間っぽい表情だった。
「わかった、超振動だ」
「それは装置ではないぞ、ルーク」
「転移用の譜陣か?」
「近いぞ、アッシュ。だが、もっといいモノだ」
ローレライは焦らすのが好きだった。あるいはこれもローレライ流の遊びなのだろうか? それでもルークに涙目で懇願されれば黙っていることなどローレライには不可能だった。ついでに黙っていようものならアッシュがどういう行動にでるかわかったものじゃない。
「ユリアロードだ」
ユリアにできてローレライにできないはずがない。
ダアトとバチカルは光の道で行き来できるようになることが決定した。
名前はどうする? ユリアロードじゃないよな。ローレライが拓くんだからローレライロードか? それはそれでなんだかとってもイヤなのだけれど・・・・・・。
命名・ローレライロード(仮)
その名前が定着する前に何かいい名前を考えようと密かに誓うアッシュだった。
ちなみにローレライは乗り気だ。ルークはあまり気にならないようである。流石はかつて『ルーク橋』を受け入れただけのことはある。



問題はどことどこを繋ぐか、だった。
バチカル側はファブレ公爵家のルークの私室で決定だった。ルークが屋敷に戻ったら早速、などと話していたのだが、ダアト側の出入り口の場所が問題になったのだ。
かつてアッシュが自室を与えられたのは今から数年後のことである。その自室だってヴァンの出入りがほぼフリーパス。そんな状況ではルークの部屋と繋ぐわけにはいかなかった。
アッシュは神託の盾(オラクル)内での逸早い出世を余儀なくされた。
安全が確保されるまではローレライロードの開通はお預け、その間は便利連絡網しか二人を繋ぐものはない。
ローレライが盗み聞き―――盗んでいるわけじゃない、というローレライの訴えはアッシュにより無視された―――していることを気にしていたのは最初だけで、慣れたのか開き直ったのか諦めたのか、ローレライの出歯龜ツッコミなんて無視して二人の世界を構築するのにそう時間はかからなかった。ローレライはルークが幸せならそれでいいので、楽しそうにツッコミを入れながら嬉々として盗聴(だから盗んでないという訴えは/以下略)していたとかいないとか。
一秒でも早く生(生言うな!)ルークに会いたいアッシュは色々頑張ることだろう。



この部屋にベッドなどという気が利いた物はない。硬く冷たい譜業装置。そんなお世辞にも寝心地がいいとは言えない場所であったにも関わらず、二人とも起きるのが勿体無いと思うほど快適な眠りを得ることができた。その理由が初めて寄り添って眠ったことにあるということに、果たして気付いているだろうか。
引き離されたらしばらくは会えないことがわかっていたので、徹夜で話し込むつもりでいた二人とローレライだったが、精神はどうあれ身体は十歳児と作られたばかりのレプリカである。気が付けばお互いを抱きしめた状態で熟睡していたのだ。翌朝ヴァンの気配を感じたローレライが、ヴァンが部屋に入ってくる前に叩き起こすまでぐっすり眠っていた。
意外と使えるローレライだった。もっともアッシュはどうせならヴァンがこの部屋に入れないようにしてくれればいいのに、とか勝手なことを思っていた。
ヴァンが部屋に入って来ると、アッシュは譜業装置の上で横たわるルークを睨みつけていた。しばらく見られなくなる顔を一秒でも長く眺めていたいために凝視していたというのが真相である。眉間に皺が寄っているのは気を抜くと微笑んでしまいそうだからだ(微笑むアッシュ・・・・・・/失笑)
そんなアッシュの様子を見てヴァンは満足気に笑った。
アッシュがレプリカを憎む。レプリカが作られることになった理由―――かつてのアッシュが上書きされる前のアッシュには、キムラスカの実験動物であった彼を憐れに思い苦痛を伴う人体実験から解放するためにレプリカを創らせたのだ、と説明してあったのだ―――を憎む。自分の計画に協力するようになる。
アッシュのデフォルトになりつつある眉間の皺はデレ隠しでしかないというのに、ヴァンはそんな自分勝手な方程式を組み立てていた。
ルークは寝ているふりだ。誕生したばかりで自我のないレプリカであると思い込ましておく必要があるのだが、ルークに演技でヴァンを誤魔化すのは無理そうだったので屋敷に戻るまでは寝たふりでもしとけ、とアッシュに言われていたのだ。薄目を開けてアッシュの姿を窺うことも禁止されたのでほとんど不貞寝状態である。
「俺だってアッシュの顔見ていたかったのに」
ルークの訴えに「鏡でも見ていろ」と言える者はここにはいなかった。



ヴァンはアッシュを部下に任せると、たった今ルークを見つけたかを装ってバチカルに帰還した。
昨夜の話し合いでダアト行きを承諾していたアッシュはおとなしくヴァンに従っていたが、今は失意で呆然としているようだがいつ暴れだすかわからない、と思われているようで罪人護送用の馬車のようなものに乗せられた。鉄格子の嵌った明り取り用の小さな窓しかない粗末な馬車である。座席もお世辞にも座り心地が良いとはいえない。その馬車の中でアッシュはボーっとしていた。
護送を任された部下は色々あったのだから無理もないだろうと思っているようだったが、実際はルークに意識を繋いでいるからである。
ローレライは「混ざるから止めないか」と止めるが、アッシュは「混ざる前にてめぇがどうにかしろ」と止める気はまったくないようである。
ヴァンがルークを抱きかかえていることに悶々としていたが、見たくない光景を見せられることになっても止めるつもりはないようである。
回線が繋ぎっぱなしなのは、「創られたばかりのレプリカの演技なんて無理」と言うルークに、「俺がアドバイスしてやる」という約束をしているのでルークの状況を知っておく必要があるから仕方なく、というのは建前で、ただ繋がっていたいからと言うのがアッシュの本音だろう。ローレライはアッシュの本音がわかっていてからかっているのだが、色々素直になったアッシュはからかわれようが呆れられようが自分の欲望に忠実だった。



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