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道化師は微笑う。

TOA中心二次創作サイト。

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『知らぬは~』現在編⑩

アクゼリュス救援部隊の主力構成員は白光騎士団である。

「気心の知れた者の方がルークもやりやすいでしょう」
シュザンヌのこの一声でそれは決定事項となった。それは消滅すると思っている場所に貴重な戦力を割きたくないという国王の思惑とも一致していたので、反対されることはなかったのだ。女性のみで構成された今の白光騎士団の実力が国内で一・二を争うものであると知る者は国王とその周囲にはいなかった。ファブレ家の当主がシュザンヌに替わってから戦争は起きていないので、彼女たちが屋敷の外で活躍する機会は皆無だったのだからそれも仕方のないことだろう。
救援が目的である以上医療関係者を同行させることは必須である。治癒士が無力となってから一躍脚光を浴びるようになった医師や薬師は一般からボランティアを募った。彼らが実は医師や薬師のふりをした協力者であると気付ける者はまずいないだろう。ちなみにボランティアを称する彼らの正体は暗闇の夢である。表の顔はサーカス一味。実体は被験者(オリジナル)イオンの手足。その主な任務は諜報活動にある。変装などお手の物だ。
「あれって、イオンだよな」
そこに昨夜ヴァンによって誘拐されたはずの導師イオンが混ざっていることは公然の秘密だった。
ルークはまず救援部隊を二つに別けた。親善大使としての初仕事である。
救援部隊のアクゼリュス行きを阻止するために海上やらバチカルの入り口やらを見張る六神将がいる、なんてことはないので全員海路でも問題ないように思える。
対外的な理由にはヴァンたちの存在が大いに役立ってくれた。
和平の成立を阻止したい―――秘預言を知る者は心の中でこっそりと「和平」を「預言」に変換していた―――ヴァンは、ルークのアクゼリュス行きを邪魔しようとするだろう。救援部隊が一つではルークの居場所を彼らに教えているようなものである、と。
「でしたら、囮の部隊にはわたくしが・・・・・・」
「陛下にダメだって言われてんだろ」
諦めの悪いナタリア、ではない。ナタリアも今回自分が立つべき舞台がバチカルであることは充分承知している。これはナタリアのアクゼリュス行きを国王が反対していたことを民衆に知らしめるためのパフォーマンスだった。本当はインゴベルト本人とこのやり取りをしているところを見せたかったのだが、救援部隊の見送りに来たのがナタリアのみでは仕方がない。王の言葉を伝聞という形で見送りに集まった人々に教える。ナタリアとルークの会話は、アクゼリュス崩壊の報せやルーク・フォン・ファブレが行方不明であるという情報がバチカルにもたらされた時、王はこうなることを知っていたのではないかという疑惑を国民に抱かせるための布石となるだろう。
ジョゼット率いる白光騎士団は海路で、ルークたちと暗闇の夢は陸路でアクゼリュスに向かうことになった。もちろんどちらに親善大使が同行しているかなど公にされるはずがない。白光騎士団が厳重に警備する一団と、ほとんど一般市民のボランティアで構成された一団。何も知らぬ者が見たらどちらにルーク・フォン・ファブレが同行していると思うだろうか。つまり囮は海路組ということになる。
しかし真の囮は陸路組だった。
ルーク・フォン・ファブレが陸路でアクゼリュスに向かったという情報は、隠しているふりをしながら巧みに漏洩させた。もちろんモースが導師不在をダアトに隠すため吐いた嘘―――それが嘘だと思っているのはモースだけで実は真実である―――「導師は親善大使一行に同行した」という情報も、である。
アクゼリュス崩壊前にセフィロトに細工を施したいヴァンは、今頃必死になって導師を探していることだろう。
そしてもう一人、ヴァンが探している人物がいる。
オリジナルの人間と大地の消滅を望みながらも妹だけは例外だった男は、ティアのアクゼリュス行きを阻止しようとするはずである。預言の監視者であるティアは、鉱山の街消滅の預言を現実とするためにアクゼリュスにルーク・フォン・ファブレを導く使命を負っている、とヴァンは思い込んでいるはずだ。
ルーク・フォン・ファブレのいる所に目的の人物がいる。ヴァンがルークたちを追ってくる可能性は十分あった。
ルークたち―――実際に計画したのはジェイドであり、実行したのは漆黒の翼である―――はヴァンたちが陸路組に狙いを絞るように巧みに情報を操作していた。ヴァンたちの目を海路でアクゼリュスに向かった白光騎士団や、アクゼリュスという土地から逸らすことが真の目的だったのだ。つまりは崩壊までの時間稼ぎである。
「さあさあ、皆さん。そろそろ我々も出発しますよ。あんまりのんびりし過ぎて自然崩壊なんてことになったら目もあてられませんからね」
アクゼリュス崩壊は避けられない道なのだろうか?
時が近づくにつれルークの表情に陰りが生じることが多くなったのは気のせいではないだろう。
今回の計画では人命を犠牲にするつもりはない。アクゼリュスの住民はすべて避難済みだったし、ルークたちが時間稼ぎをしている間に、勝手に住み着いた人間たちを白光騎士団やマルクトが派遣した救援部隊が退去させることになっている。住民たちがアクゼリュスが崩壊するという話を信じずそこに残ることを望んだとしても、密入国や盗掘の罪で逮捕してしまえばいいだけの話だ。
「崩壊させなきゃダメなのかな」
誰に聞かせるともなしに呟かれた言葉。あるいは音にはなっていなかったのかもしれない。そんな小さな呟きであったとしてもアッシュにだけははっきりと聞こえていた。
アッシュは何も言わない。ただくしゃりとルークの頭を掻き混ぜただけだった。
こういう時容赦がないのはジェイドだ。すべては推測に過ぎないと前置きをして彼は自説を語った。
「パッセージリングの稼動寿命が約二千年であることをユリアは知っていたと思います。だからホド島やアクゼリュス消滅の預言を残したのでしょう。限界に近づいたセフィロトツリーを人為的に破壊することで、他のまだ使用できる、といっても数年から数十年程度だと思いますが、セフィロトツリーが連動して崩壊する危険を排除しようとしたのではないでしょうか。マルクトがキムラスカとの戦争に負けるとされたのもマルクト領にあるパッセージリングの寿命の方が短かったからだと思われます。貴方が超振動を使わなかったとしてもアクゼリュスは消滅したでしょうね。いえ、もしかしたら他のセフィロトツリーを巻き込んでいた可能性もあります」
前回のアクゼリュス消滅を気に病む必要はないと言いたいのかもしれないが、あまり慰めにはなってはいないようである。
「それに全セフィロトを一括操作するためにはアルバート式封咒を解いておく必要がありますしね」
外郭大地降下作戦のために必要なことだったと言われても、ルークは仕方がなかったのだと割り切ることはできなかった。それどころか今回もアクゼリュス崩壊は避けることができないと知り、落ち込む一方である。
そんなルークの様子に気付いているのかいないのか、いやジェイドのことだ気付いていないということはないだろう。それでもジェイドは「ただ」と常と変わらぬ口調で淡々と告げた。
「パッセージリングを破壊せずともアルバート式封咒を解く方法がないか、それとアクゼリュスを崩壊させずに魔界(クリフォト)に降ろすことができないかは検討する余地があるとは思います。すべては実際にアクゼリュスのパッセージリングとセフィロトツリーを見てみないことには始まりませんが」
この世の終わりとばかりに落ち込んでいたルークの顔に笑みが戻る。最初の落ち込みが酷かっただけにその変化は劇的だった。
前置きが長すぎるわ、とか。そんなにもったいぶらなくてもいいの、とか。前半いらねぇだろうが、後半だけで充分じゃねぇか、とか。そういう感想を抱くのが普通だ。
ルークのこの表情の変化が見たかったからじゃないのか、とうっかり思ってしまったガイは同類である。
そんなことを考えていたことがアッシュにバレて、ジェイドにやり返せない分も上乗せされてガイが追い掛け回されるのは、バチカルを出てからの話である。いかにアッシュが短気で沸点が低かろうともバチカルの街中で追いかけないだけの分別はあったようだった。



廃工場からこっそり出て行く必要もなければ、ザオ遺跡に寄り道をする理由もない。ルークたち陸路組の道中も今のところ問題なく進んでいた。
ルークは馬車の中だ。王族を乗せるに相応しい豪奢な物というわけにはいかなかったが、それは簡素な外観に反し乗り心地のよいものだった。シュザンヌの心遣いであると知っては、出発直前まで徒歩の旅を希望していたルークも承知せざるを得ない。アッシュが当然のように馬車に乗り込むのは、自身もまたここにいることをヴァンから隠したかったからか、それとも壁一枚でも己とルークを隔てる物があるという状況が我慢できないからか。後者であるような気がしてならないのは、外を歩くことを余儀なくされた者たちの共通の見解だった。
アニスはここにはいないことになっているイオンをルークと一緒に馬車に押し込める。「アニスも一緒に」とイオンは誘うがアニスは非常に残念そうな顔で辞退した。
バチカルから充分離れると、共にバチカルを出発した医療従事者たちは変装を解いて暗闇の夢に戻り、諜報活動と情報操作という本来の役目を果たすべく各地に散ってく。
こうなると陸路組はますますアクゼリュス救援部隊には見えなくなった。
仰々しい護衛を配しないことで「ここに親善大使はいない」ということをアピールしつつ、その一方でティアとアニスが素顔を曝して馬車を護衛することで、二人を知る者にルークとイオンがここにいるということを知らしめる。そういう作戦だった。つまりヴァンたちにだけわかるようにという配慮だ。その不自然さに気付くか気付かないかが勝敗の分かれ目だろう。いやたとえ気付いていたとしての、彼らに勝機がないことに変わりはないのかもしれない。
罠であるとわかっていても食いつきたくなるような魅力的な餌をチラつかせながら、一行はアクゼリュスへと向かう。
馬車を挟んで左右にティアとアニス。後ろにガイ。御者台にはジェイドが着いた。
ルークの護衛兼世話役として同行したガイが馬車に乗れないのは当然だったが、マルクト皇帝の名代であるジェイドが馭者を務めるのは本人が望んだからである。
「馬に蹴られたくはありませんから」
ジェイドの鋼鉄ザイル並みの神経も、二つの聖なる焔に温められた馬車の中では融け出すらしい。身体は弱くてもイオンの神経は鋼鉄ザイル以上の強度であるということだろうか。



ルークたちは何事もなくデオ峠の麓に到着した。砂漠越えの最中にヴァンたちの襲撃があるかもしれないと身構えていただけに拍子抜けである。
ザオ遺跡のダアト式封咒の解呪をヴァンは諦めたのだろうか?
「シュレーの丘の解呪に失敗したことで、計画を変更したのかもしれません」
シュレーの丘とザオ遺跡のパッセージリングに預言にはない命令を書き込み、本来アクゼリュス消滅のみで済むはずだった崩落にルグニカ平野の大部分とザオ砂漠を巻き込んだ。それが預言に支配された人間と大地の消滅を望んだヴァンの計画の第一歩だったはずだ。
彼が自分の計画を諦めたとは思えない。
だとすると。
「兄はアルバート式封咒の解呪する方法を知っているのではないでしょうか?」
「可能性はあります」
ヴァンはアルバート流剣術の使い手である。剣術と共に解呪方法が伝わっていたとしたら。
ヴァンの弟子でありアルバート流剣術を使う二人に目を向ければ、同じ動作で首を横に振った。自分たちは知らない、と。
超振動でパッセージリングを破壊する前にアルバート式封咒を解呪し、そこから各地のセフィロトに一斉崩壊を指示することができるとしたら。
「かつてよりも酷いことになるかもしれませんねぇ」
笑っている場合ではないだろう、と突っ込むモノはいない。
ヴァンが解呪方法を知っていたとしても、一斉操作などさせなければいいだけのことだ。
ジェイドにはヴァンを出し抜ける自信があった。そしてそれは仲間たちも同じだった。
それよりもパッセージリングを破壊しなくてもアルバート式封咒を解くことができたらいいと、ジェイドは思う。それが世界を救うために必要なことだったとしても、ルークに辛い思いはさせたくなかったから。そんなジェイドの思いに気付くことができたのはルークを除く全員である。それは皆がジェイドと同じ思いを抱いていたからに他ならなかった。



デオ峠の手前で、ルークたちは馬車から降りることになった。馬たちの手綱を解いて平野に放す。
「ありがとうですの~」
ミュウにこの場所からなるべく離れることを通訳させたが、果たしてどこまで伝わっているだろうか。
「動物には天災を予知する能力があると言われていますから、大丈夫だと思いますよ」
ここから先は細く険しい峠道だ。王族や導師であったとしても歩かざるを得ない。
「イオン様はトクナガに乗ってください」
「ありがとうございます。アニス」
今のアニスは導師守護役として相応しい気遣いができるようになっていた。そしてイオンにも自分の体力のなさを自覚し無理をしないだけの分別があった。
教官・・・・・・リグレットはここで待ち構えているのだろうか、と峠を見上げながらティアは思う。
広い砂漠で一台の馬車を探すよりも、他のルートの選びようのない一本道で待ち伏せた方が効率がいいのは確かだ。
「いると思いますよ。油断しないで行きましょう」
峠越えに臨むにあたり一番仕度に手間取っているのはアッシュだった。
今はまだルークたちがアッシュの正体を知っていることを、ヴァンたちに知られるわけにはいかないのだ。
共にいることはイオンの護衛という建前があるから問題ないだろう。
フードで髪を隠し、仮面で顔を隠す。ルークの隣を歩きたいという思いを押し殺し、トクナガに乗るイオンの前を行く。
細い山道では一列縦隊で進むことを余儀なくされた。先頭はガイ、その次にアッシュ、トクナガに乗ったイオンとアニス、ルーク、ティア、殿(しんがり)がジェイドである。
その人影に最初に気付いたのはガイだった。
ここで接触してくるだろうと予想していた場所と寸分違わぬ場所だったので驚きはない。
「アニスはイオン様を・・・・・・」
人目のない場所だったので、ルークに対して王族だからという気遣いはない。アッシュは不満そうであったが、リグレットの手前ルークを庇うような行動は控えなければならない。それが一番難しいのではないか、とアッシュをよく知るモノたちは思う。
「止まれ!」
銃声が峠に響いた。
もう止まっているし戦闘態勢なんだけど、と少々リグレットが憐れになってくる。
問答無用でやってしまおうかと思うが、残念ながら遠距離攻撃を得意とするナタリアは不在だった。
これぐらいの高さなら飛べるだろうか、とガイが思う。ジェイドは譜術の詠唱に入った。後は発動させるだけというところで待機中である。直ぐにでも突っ込んでいきそうなアッシュは、トクナガに守られたイオンがこっそり服の裾を掴むことでその行動を制止していた。そうでもしなければアッシュは止まらないだろう。
リグレットにも言いたいことはあるだろう。聞いてやらなければかわいそうではないか。
そんな同情たっぷりな視線を向けられていることに果たして彼女は気付いているだろうか。
「ティア。何故そんな奴らといつまでも行動を共にしている」
「教官・・・・・・いえ、リグレット。貴方こそ教団を、導師を裏切って何をしようとしているのですか?」
「人間の、意志と自由を勝ち取るためだ」
リグレットはヴァンの最終目的を知らないのだろうか? 死後に得た自由にどんな意味があると言うのだろう。それとも預言に捕らわれた人間には死を、そうではない人間には生きる権利を与えようとでも言うつもりだろうか。神にでもなったつもりか? いやヴァンはレプリカ世界の神になろうとしていた。なんて愚かで傲慢なのだろう。人間はどう足掻こうとも人間以外の何者にもなれないというのに。
「私は私の意志で行動しているわ。兄の狂気に捕らわれた貴方に自由を語る資格があるとは思えません」
「閣下に協力することは私の意志だ」
「その理屈が通るというのでしたら、預言に従うことを選んだのもまた人間(ひと)の意志、ということになるのではありませんか?」
「と、とにかく・・・・・・ティア、私たちとともに来なさい」
どもるリグレットに、誤魔化したな(ましたね)、とルークたちが思うのは当然だった。女性相手に口でも勝てるジェイドは流石である。
「リグレット、ヴァンは何をしようとしているんだ」
行く行かないで揉めている師弟の間に割り込んだのはアッシュだった。
ヴァンがやろうとしていることなど先刻承知している。それをあえて尋ねたのはリグレットがどこまでわかっていてヴァンに協力しているのかを確認するためだった。
「アッシュ。まさかおまえがその出来損ないと一緒にいるとはな」
髪と顔を隠していてもその声でそれがアッシュであると気付いたのだろう。リグレットの顔色が変わった。驚きと呆れがない交ぜになっている。
出来損ない、とリグレットがその一言を発した瞬間、アッシュの身に纏う雰囲気が変わった。幸い仮面で隠されて素顔を曝すことは免れたが、きっと仮面の下では般若のような形相でリグレットを睨みつけていることだろう。
まずい、とルークは思う。アッシュを止めなければ。
ルークを馬鹿にする発言にキレてリグレットに攻撃を仕掛けるのがアッシュであってはならないのだ。今はまだアッシュが己のレプリカに好意を抱いていることをヴァンに知られるわけにはいかない。
ルークは回線でアッシュを止めようとしたが、怒りに我を忘れたアッシュには届かなかった。
アッシュの右手が剣の柄に掛かる。
「インディグネイション!」
強烈な雷撃がリグレットを襲った。アッシュの我慢が限界にきていることに気付いたジェイドが逸早く譜術を発動させることで、アッシュの行動を誤魔化す。
それを皮切りにガイが崖を駆け上る。
「初っ端から秘奥義かよ。相変わらず旦那は容赦がないねぇ~」
口調は呆れているふうであるが、ルークを出来損ない呼ばわりされて怒っているのはガイも同様である。
ジェイドとティアは譜術の詠唱に入り、イオンの護衛であるはずのアニスまでもが巨大化させたトクナガに乗って崖をよじ登っていく。
皆が皆リグレットの答えをまだ聞いていないとかそんなことはどうでもよくなっていた。
ヴァンに騙されているとかいないとか、そんなことは関係ない。今の一言でリグレットの罪は死罪相当。それがルークを除く全員の判決だった。
「アッシュ」
参戦しようとしたアッシュはルークが止めた。
「大丈夫だから」
剣の柄を握る指を一本一本解いていく。
四人の一斉攻撃に防戦一方のリグレットはこちらの様子を気にかける余裕はないだろう。
「出来損ないなんかじゃないって、アッシュは思ってくれているんだろ」
「当然だ」
我慢する必要がないと思ったアッシュはルークがいかに素晴らしいかを語り続け、その言葉の一つ一つにルークは真っ赤になって照れながらも嬉しそうな笑みを浮かべていた。
一人蚊帳の外のイオンはその様子を微笑ましげに見つめるだけである。
この状況を制止できる人間は現在戦闘中で手が離せないはずだ。時と場を弁えないアッシュだったが至福の時間はそう長くは続かなかった。
「私たちだけに戦わせておいて、何イチャイチャしているんですか、貴方たちは」
いつの間にか戦闘は終了していたようである。リグレットはほうほうの態で逃げていったらしい。
「すごかったですよ」
崖の上の攻防の一部始終を見ていたイオンが感嘆の声をあげる。見逃したのは勿体無かっただろうかと残念がるルークに、ジェイドの嫌味は通じそうになかった。
「それでは先を急ぎましょうか」
もうヴァンたちが襲ってくることはないだろうと思ったアッシュとルークは、その後の道中は誰にはばかることなくべったりだっし、嫌味を言うのが如何に無駄である悟ったジェイドは呆れつつも見守る・・・・・・見て見ぬふりをすることにしたようである。
アクゼリュスはもう目の前だった。

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