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道化師は微笑う。

TOA中心二次創作サイト。

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『知らぬは~』現在編①

ND2018・レムデーカン・レム・二十三の日―――それがかつてルークの旅が始まった日である。しかし本当の始まりはその数ヶ月前に遡る。

それはティアが決意を胸に外郭大地に赴いた日であったり、導師イオンがマルクトの要請でダアトを出奔した日であったり、エンゲーブ村で食料盗難が相次ぐようになった日だったり、するのだが、それらがレムデーカン・レム・二十三の日から始まるルークの旅に関わってくることなど、かつては誰も知る由がないことだった。
しかしそれもすでに同じ道をたどることのない未来の記憶でしかない。
かつての道が預言通りの道であったのだとすれば、彼ら、彼女らは既に預言を覆していると言ってもいいだろう。
ティアはもう何年も前から外郭大地で暮らしていたし、今のイオンは誰にも何も告げずにダアトを出立したりはしないだろう。ライガの森は炎上していないのだから当然エンゲーブで食料盗難など起こるはずがない。そうミュウもまたローレライにより選ばれたモノの一人、いや一匹だったのである。
それでも彼ら、彼女らには同じでなければならないことがあった。そして同じであっても違うことを望んだ。
かつてと同じようにルークと旅をしよう。しかしかつてとは違ってその眼を涙で濡らさぬようにしよう。いや、嬉し涙ならよいのだ。笑いすぎて涙が出るというのならばいくらでも泣かせてやろうではないか。
それぞれの場所でそれぞれの物語が始まる。その物語が一つになる日を夢見ながら。



まずはブタザル、ではなくミュウの物語から始めるとしよう。
ミュウが生まれたのはルークが誕生した以降のことだ。なので、彼には生まれた瞬間からかつての記憶を所持していたようである。もっとも自身が生まれた時間からやり直しているらしいと気付いたのは自我が芽生え始めたころだった。
ミュウはご主人様に会いたかった。しかし今の時点でそれは難しかった。ご主人様はきっとバチカルにいるだろう。バチカルまで行くことができればご主人様に会えるかもしれない。ご主人様に会いたい。その一念でミュウは森を飛び出した。
魔物の思考は単純だった。今のルークに自分の知るご主人様ではない可能性など欠片も考えてはいなかった。森の仲間たちに自分と同じような記憶を有しているモノなど一匹もいないというのに、ルークは、ルークたちは自分と同じであると確信していた。
時として野生の勘は理論を上回る。ミュウの勘は正しかったのだ。
そうしてミュウはエンゲーブにやってきた。この小さな身体で歩いていくにはバチカルは遠すぎる。世界の食料庫であるエンゲーブ。ここの作物がバチカルでも食べられていることをミュウは知っていた。バチカルに輸出される作物の便に乗せてもらおうと思ったのだ。密航も考えた。しかし行き先を間違えてしまっては本末転倒である。キムラスカに運ばれる荷はどれかと、ミュウは一生懸命村人に尋ねた。しかしミュウにはソーサラーリングがなかったのである。それでは言葉か通じるはずがない。それでもミュウは頑張った。その結果村人たち、特に子供たちの人気者になった。最初は言葉で、次は身振り手振りで、そしてミュウは終に気付いたのである。字を書けばよいということに。
子供たちを集めて―――本当は大人が良かったのだが、農作業に忙しい大人たちはミュウの相手をしてはくれなかったのだ―――ミュウは棒切れで地面に文字を書いた。
『バチカルに行きたいですの~』
ここはマルクト領だった。一生懸命なチーグルの願いを叶えてあげたいと思っても、子供たちにとってバチカルは遠すぎた。いやたとえ近かったとしても、キムラスカは敵国である。連れて行くことは不可能だった。子供たちにできることは、チーグルの願いを叶えてあげられないだろうかと、字を書くことのできるチーグルの話を自分の親に伝えることだけだった。
一方で人懐っこいチーグルがいるという噂はよからぬことを企む人間の耳にも伝わった。つまりは密猟者たちに、である。
そして翌朝、ミュウの前に現れたのは密猟者の方だった。



さてそのころのタルタロス。
ジェイドはかつてと同様タルタロスでダアト経由しバチカルへ向かっていた。
しかしかつてとは違って、導師は教団の総意を得てマルクトに協力していたし、護衛として導師守護役(フォンマスターガーディアン)のアニスだけではなく、特務師団長アッシュも同行させていた。
ジェイドはかつてのようにモースを筆頭とする反対派の目を気にして極秘裏にイオンに接触しようなどとはせず、正面から堂々と正式な手段で面会を求めた。ピオニーの親書ももちろん事前に準備済みである。モースとヴァンが不在の時を狙ってダアト訪問したのももちろん計画の内であった。
そのころモースとヴァンはバチカルに足止めされていた。もちろんバチカル組の仕業である。二人はダアトに戻るどころかダアトの様子を知る術さえない状態に置かれているのだが、もちろんそのことに気付かれるようなへまをするキムラスカ組ではなかった。
モースにはアニス、ヴァンには六神将がいたので、二人ともダアトに帰国できなくてもそんなに気にしてはいなかったのだが、アニスが実は二重スパイであったり、六神将のうちリグレットとラルゴ以外が既に寝返っていたりすることに、どちらも気付いていないあたりがこの二人が彼らに勝てない要因に違いないだろう。



ND2018・レムデーカン・レム・23の日。
ティアはファブレ公爵家の屋根の上にいた。
普通に中庭に通じる扉から登場していいとは言われたのだけれど、なんとなく前と同じな方が楽しそうだと思ったのだ。
「裏切り者、ヴァンデスデルカ!」
この一言は是非とも叫んでおきたい。そしてこの言葉は屋根から飛び降りながら放つのが一番相応しいような気がしたのだ。
朝食の席でティアがその話をすると、シュザンヌは女の子が屋根から飛び降りるなんてと一頻り心配した後で、梯子を準備するようガイに命じた。
シュザンヌの心配はルークとガイとナタリアの連携で一蹴されたのだ。
「ティアですもの。心配はいりませんわ。それよりも、わたくしもご一緒させていただいてはいけませんかしら?」
シュザンヌの説得よりも、ティアと二人で屋根から登場してみたいと言い出したナタリアの説得の方が大変だった。
ナタリアがヴァンを裏切り者扱いする理由は現時点では存在しない。少なくともヴァンはルークたちが知っていることを知らないのである。
「ナタリアの場合、飛び降りない方がいいと思うのだけど」
屋根の上から狙い打つ方が効率が良いのではないか、と。
そういう問題ではないと思うのだが。以前とは違い立派な軍人になったティアの指摘は、一弓使いに向けた言葉であるのなら正しいだろう。しかし王女に対する言葉ではない。
「それもそうですわね」
それに納得してしまう王女の方もどうかとは思うが本人はまったく気にしていないようである。それよりも屋根の上で弓を構える己の姿を想像しうっとりしていた。
まずはすっかりその気になっているナタリアを説得しなければならないようである。
いくらなんでもそれではヴァンに怪しまれるだろう、と。
ナタリアは多少無理があろうともヴァン襲撃に加担する気満々だったので、屋根からの登場は諦めてもすぐさま次の手を打ってくる。
「そうですわ。侵入者であるティアを攻撃するふりして謡将を狙うというのはどうかしら?」
「俺には当てないでくれよ」
「ルーク。わたくしを誰だとお思いですの?」
ランバルディア流弓術免許皆伝ナタリア・ルツ・キムラスカ・ランバルディア王女様であらせられます。
ルークとガイはお互いの顔を見合わせ、深い深い溜息を吐いた。
ナタリアをどうやって思い止まらせようかと頭を痛めるルークとガイだったが、援護射撃は思わぬところからもたらされた。
「まぁ殿下。それはいけませんわ」
ナタリアとティアが友人同士であることは公にしてあるのだから、ナタリアがティアを攻撃するのはおかしいと、おっとりしているようでいて意外と鋭いシュザンヌが指摘する。
あからさまにガッカリするナタリアに同情してはいけない。ガッカリしているのは確かだが、彼女は諦めてはいないのだ。
「最初からヴァンを狙ったらどうかな」
ヴァン襲撃を諦めかけたナタリアの援護は意外な人物がした。いやもしかしたらこれ以上相応しい人物はいないかもしれない。シンクの参謀総長としての能力はオリジナルから受け継いだに違いないと思うのはこういう時だった。
「名案ですわ」
ナタリアがオリジナルイオンの手を取って飛び跳ねる。ナタリアにとっては唯一の味方であったが最強の加勢である。
「理由が必要よね」
「友の加勢をするのに理由など必要ありませんわ」
もうナタリアを止める手立てはないだろう。こうなった以上ヴァンに疑いを抱かせないための状況作りをするより他はない。
先ずは武器の調達が問題となる。ルークとヴァンの稽古を見学している王女の傍らに弓と矢があるとはどんな状況なのか。
パチンと王女の指が鳴る。
「大佐に教えていただきましたのよ」
エルヴンボウ―――いつの間に作ったのだろうか。セレスティアルスターが良かったというナタリアの希望は、今はまだ闘技場で目立つわけにはいかないため断念せざるを得なかったのだ。
「ティアが襲撃してきたらこっそり取り出しますわ」
再び体内に収納しようとしたが、その前にそれを取り上げる手があった。
「何をなさいますの?」
ジョゼットだった。
「これはお預かりいたします。殿下を護衛する騎士からお受け取りください」
コンタミネーション能力は隠しておくべきである、というのである。
その意見にはナタリアも納得したようで、「よろしくお願いしますわ」と愛弓を預ける。ここにいる人間が第三者であったならば、護衛の騎士から武器を奪い取る王女をヴァンが訝しがらないかと不安になりそうなものなのだが、ナタリアをよく知る者からしてみればそれはとても彼女らしい行動だったため誰も気に留めなかったのだ。
最後にうっかり殺してしまわないようにと念を押して、ナタリアの参戦は決定事項となった。
「擬似超振動は、ローレライがどうにかしてくれるんだったよな」
「うむ。しかとタタル渓谷に送り届けよう」
この場には人型を模したローレライも同席していた。この七年間で随分人間っぽくなったものである。
「本当に行くのですね」
シュザンヌはルークに思いとどまって欲しかった。すべて計画のうちで危険はないと聞かされていても彼女の心配は尽きない。それに寂しさが拍車をかけた。もう一人の息子も計画遂行中のためしばらく会う事が叶わない状態にあるというのに、ルークまでこの屋敷を出てしまうなんて、と。
ルークは母のその視線に弱かった。それでも、いくら母の頼みであっても今回だけは譲れない理由がルークにもあるのだ。
そもそもこの襲撃の本当の目的はそれなのである。
現在レプリカイオンやジェイドと共にキムラスカに向かっているアッシュとエンゲーブで合流すること。以前と同じことをしなければならない理由はなかったのだが、このことに関してはルークが「どうしても」と言ってきかなかった。
数日前いつものようにファブレ家を訪れたアッシュから「しばらくダアトを離れるから会いに来られない」と聞かされたルークは、もうそんな時期なのだと思った。
ティアがファブレ公爵家を襲撃した日。それはルークにとって忘れることのできない特別な日だった。そして再びバチカルの地を踏んだ日も、である。
ルークの始めての旅は二月半ほどに及んだ。今回六神将の襲撃がなく―――「なければいいな」と期待はしているが、「ない」という保証はない―――道中すべてタルタロスの使用が可能であったとしても、しばらくはアッシュに会えない日が続くことになるだろう。
ルークにはそれが我慢できなかった。
そしてローレライはルークのお願いにすこぶる弱かった。
ルークはアッシュに会いたいがためにティアと超振動を起こすことを望み、ティアは兄に一撃喰らわせたいとの思いからそれを了承したというのが事の真相である。
だからなんとしてでも超振動は起こさなければならなかった。
ティアの第七音譜術士(セブンスフォニマー)としての能力が低下している今、上手く超振動を起こすことができるか心配だったのだが、そこはローレライが力を貸してくれることになったのだから大丈夫だろう。
「わたくしも第七音術士の端くれです。ご一緒しても問題ないはずですわ。そうですわよね。ローレライ」
タルタロスにアッシュも乗船していることを知ったナタリアが自分も一緒に行くと言い出せば、ガイが黙っているはずがない。
「もちろん俺も一緒に行くからな」
しかしガイの希望はローレライ、ティア、ナタリア、ルークによってあっさり却下されることになる。
「定員オーバーだな」
「貴方は第七音術士じゃないから無理じゃないかしら」
「こちらのことを任せられるのはガイしかおりませんわ」
「『ガイ様華麗に参上』はやらなくてもいいのかよ」
四者四様に言われ、ガイはグッと言葉に詰まる。果たして誰の言葉が彼に同行を思い留まらせたのか、それはガイのみが知ることだった。



さて最後の確認事項も終わり、ファブレ邸では中庭の片隅ではいつものように青空お茶会が開かれていた。
本日の参加者はルーク、ナタリア、ティアの三人。ガイも傍にいるがヴァンの手前本日の彼は給仕役に専念していた。シュザンヌやオリジナルイオンが不在なのは、本日来訪予定の人物が原因である。本来ならティアも隠れているべきなのかもしれなかったが、来てから隠れればよい、見つかったのなら見つかったで、そのための理由は用意してあったので問題はない、と彼女はいつも通り穏やかな一時を満喫していた。
始まりの日に備え、ティアは数日前からナタリアの許に遊びに来ていたのだった。もちろんヴァンとモースには内緒である。どうしても秘密にしておかなければならないことではなかったから、聞かれたのであれば素直に答えただろう。ただどちらも訊ねなかったのだ。
公にはされていなかったがユリアシティの市長の孫でユリアの子孫というティアの出自は、キムラスカ王女の友人という立場を得るには充分であり、五・六年前からナタリアとティアは公式に友人付き合いをしていた。同年代同性の友人を欲したナタリアがダアトに表敬訪問した際にティアとの友人になること望み、ティアの出自を知った王がそれ許可したというのが対外的な説明である。もちろん八割以上真実であれば疑う者はいないだろう。
「ヴァン謡将がいらっしゃいました」
メイドの告げた言葉に、ルークはわずかに緊張した。
「大丈夫ですわ」
ナタリアの手がルークの握った拳に添えられる。ティアとガイが力強く頷く。仲間たちの笑顔がルークに勇気を与えてくれる。
ND2018・レムデーカン・レム・二十三の日―――この日にヴァンの稽古を入れたのはもちろん計画(遊び)の一環だった。
ファブレ家を襲撃したティアとの間で超振動を起こし、タタル渓谷に飛ばされてからバチカルに帰還するまでの旅を、踏襲しなければならない理由はなかったのだが、その方が楽しそうだと言い出したのは誰だったのか? ルークはタルタロスで移動中はアッシュと会うことができないと知ると迎えに行くと言ってきかないし、今回のイオンにはアニスだけではなくアッシュも付いていると知ったナタリアが自分も一緒に行くと言い出したため、台本は何度も書き直された。ちなみに己もと望んだガイの希望が素気無く却下されたのは、ガイの不幸属性が原因ではなく、ファブレ家に残された人々の安全のためにも必要なことだったからである。要するに公爵家の庭に残されるであろうヴァン対策である。たぶん、きっと・・・・・・。
「本当にやるのか?」
「当然でしょ」
「わたくしも協力いたしますわ。ティア」
ガイは明後日の方向を向いて「女って怖え~」とお決まりの台詞を呟いた。
ヴァン来訪の知らせに、ティアは屋根に潜む準備をし、ナタリアはテーブルを庭の隅に移動させる―――実際に移動させたのは当然ガイである―――と、ルークとティアに向かって「ここでお待ちしていますわ」と手を振った。ナタリアを守るように背後に立った白光騎士の得物が弓であることを明記しておこう。もちろんコレも台本に書かれていることの一つだった。

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