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いっぱいいっぱい考えた。どうやったら、ここ以外のすべてを無にすることができるのか。
かつて大地を安全に降下させるために回ったセフィロト。同じ道を辿りながら、崩落の命を刻む。最後に残る地はここがいい、と。
「おまえが生まれた場所だからな」
ルーク・フォン・ファブレがアッシュとルークに別れた場所。
この地で生きたいと思ったわけではなかった。
二人一緒ならそこが外郭大地だろうが、音譜帯だろうが、地核だろうが大した問題ではないけれど。
重要なのは一緒にいることだけだ。
結末を予想することはできない。
再び一つに戻って別の何かになるか、それとも共に消滅するか。
一緒にいられないのなら、どちらも同じことだった。
かつては死ぬことが何よりも怖いことだと思っていた。
今は死ぬことよりも怖いことがある。
「もったいねぇな」
アッシュが愛しげに朱色の髪を撫ぜるから、この髪を失うことが怖くなる。アッシュが嬉しそうに「ルーク」と呼ぶから、ルークじゃなくなることが怖くなる。違うモノになってしまったら、もうこんなふうに傍にはいられない。今日が幸せだから、明日が怖い。
嬉しいのに苦しくて、俯いたら涙が零れた。
「嫌いになんかならねぇよ」
何でわかるのだろう。
頬に添えられた掌。親指がそっと涙の雫を拭う。
音素だけの存在になってしまったら、もうこんなふうに触れてもらえなくなってしまう。それが怖い。アッシュが大切にしているモノは一つ残らず守りたい。壊したくない。だから、この身体はこのままにしておかなければならない、なんて、まるでナルシストみたいだ。
「おまえを構成する音素はきっと美しいだろう」
自惚れていればいい、と。
「調子に乗るぞ」
「望むところだ」
こういうところがレプリカが被験者(オリジナル)に敵わない所以だ。
頬、顎、首筋、鎖骨。
下へ下へと降りていく掌。
触れられた所が熱を帯びて、ほんのりと色付く。
肩、二の腕、掌。
引き寄せられて。
指先。
「アッシュ」
困惑していても拒絶の響きはないから、そこにアッシュの行動を制止する効力はない。
「どうした?」
悪戯な唇が人差し指を食(は)む。
「食うのか?」
口付けの意味もわからない子供ではないけれど。きっとこれはそういう意味ではない。
「いいや」
大爆発(ビッグ・バン)が起きる時。被験者がレプリカの存在を食らう時。
「俺はそうして欲しいけど、な。アッシュは嫌なんだろ」
「おまえを食らってまで生きたいとは思わない」
「一緒に、行こうな」
「あぁ」
嬉しそうに抱きついて。抱きしめ返されて。二つの心と身体だからできること。その幸福。幸運。
奇跡のようなこの時間。
永遠なんてないとわかっているけど。いつまでも続けばいい、と。
崩落の音が聞こえる。
障気の海に飲み込まれる大地も、薄紫色に煙る空も、立ち枯れの森も。
そして、地核でざわめく第七音素(ローレライ)の声も。
目の前の赤以外はどうでもいいことだったから。
「アッシュ」
「ルーク」
もうお互いの名前以外、言葉も音もいらない。
最後の大地が障気の海に沈み、そして惑星(ほし)の中心で、光が爆ぜた。
ローレライが二千年ぶりに空から見た世界には何もなかった。
~あとがき~
色々解り辛いとは思いますが『世界消滅ルート(笑)』でした。
一応ローレライさんは解放してもらえたのですが、戻ってみると世界には何もなかった(障気の海だった)というオチ(ん? オチてるのか?)。世界が滅亡していてもローレライさんはきっと気にしないでしょう(苦笑)
アッシュとルークはローレライ解放のご褒美で次の世界(逆行二回目)に遊びに行くか、音譜帯で惑星(ほし)が再生する日を待ってこの世界で遊ぶか、ずーっと音譜帯でふらふらしているかもしれませんが。
この赤毛たちの譲れない願いは『二つの心と身体で同じ場所にいること』なので、面白そうだと思えば嬉々としてローレライさんの遊びに付き合いそうです。
ローレライさんは赤毛たちが楽しいと自分も楽しいようです。覗き見? 出歯亀? ストーカー?
まぁまぁ、二千年も監禁されていたかわいそうな存在なんですから許してやってくださいね(笑)