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道化師は微笑う。

TOA中心二次創作サイト。

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英雄~ヴァン・グランツ~

ヴァン師匠(てんてー)がかわいそうかもしれない話。お亡くなりになっております。死因は○○病です。○○○○〇○症候群vv
ギャグです。ものすごくふざけたネタ(コバナシ)です。
アッシュ・ルーク・ローレライ逆行。ティアもかしら? 他にも逆行している人はいるかもしれませんが、出てこないので省略。
笑って許していただけること切望(苦笑)
大丈夫そうな方はmoreよりご覧ください。





【英雄~ヴァン・グランツ~】



それが大地を支える柱であると、その時は知らなかった。
坑道の奥、ダアト式封咒によって守られていた部屋には巨大な音叉を模った音機関あった。
「さあ、ルーク。あの音機関―――パッセージリングまで降りて、障気を中和するのだ」
何故ヴァンはそれがパッセージリングというものであると知っているのだろうか? それに障気を中和するというのはどういうことなのか。確かにそれができるのであれば、この地に住む人々を救うことができるだろう。
「どういうことです? 中和なんてできるんですか?」
イオンの疑問に、共にこの場所までやってきた赤い髪の青年はニッコリと笑ってみせた。
「大丈夫だよ、イオン。師匠(せんせい)がそういうんだから、できるに決まっているだろ」
愚かな、どこまでも愚かなレプリカルーク―――ヴァンがそう思っていることをイオンは知らない。ルークがすべてわかっていることをイオンは知らない。
だから、これから起きることのすべてはヴァンが考え、ヴァンがやらせたことなのだと思ってしまった。そう思うことさえも本当の黒幕の思惑通りだったことなんて、イオンが知る由もなかった。



アクゼリュスのパッセージリングに向けて両手を伸ばす。
ヴァンに操られた―――ふりをした―――ルークは、ローレライの助力を得てその地を覆っていた障気を中和した。
期待していたものとは違う結果になったことに戸惑うのはヴァンだけだった。



「すげーや。師匠の言った通りですね」
誉めて誉めて、と千切れんばかりに揺れる尻尾の幻影が見える。
自分はもう終わっているのだろうか、とヴァンは思う。
たしかに、超振動を使って障気を中和するという方法をルークに教えたのは自分だ。しかしそれはこの場にルークを連れてくるための方便であって、違う結末が訪れることを確信していた。切望していた。
だが結果はどうだ? 自分が吐いた嘘が現実となって、今、目の前にある。
「兄さん。ごめんなさい。私は兄さんのことを誤解していたわ」
妹よ。それは誤解ではなくて、この状況が誤算なのだ。
もちろんヴァンに妹の言葉を否定することはできなかった。いや、ティアがそれをさせなかったと言った方が正しいのだろう。
一部始終を目撃していた導師の言葉は絶大だった。
ヴァンはあれよあれよと言う間に世界を救った英雄に祭り上げられていった。その人気は実際に超振動を使い障気を中和したルークよりも高い。
それはそうなるように世論を誘導した者がいたからだったが、もちろんそれはヴァンや民衆の知るところではなかった。
リグレットやラルゴは英雄としてダアトに凱旋したり、あるいはキムラスカやマルクトに国賓として招かれたりするヴァンの姿を遠くから眺め、裏切られたような気持ちになった。
アクゼリュスでの障気中和は確かに預言には詠まれていないことだ。預言脱却という意味では目的を果たしたことになるのかもしれないが、預言に従ってきた人間に対する復讐はどうなったんだ? と。
それでも復讐心よりも恋心の勝ったリグレットはヴァンに追従する道を選んだ。
袂を分かったラルゴのその後を知るモノはいない。
同志を失ったヴァンであったが、だからといって預言とそれをもたらす第七音素の意識集合体(ローレライ)の消滅とレプリカ世界の構築を諦めたわけではなかった。
しかし世界はヴァンに一秒の自由も与えてはくれなかった。
世界を救った英雄の姿を一目見たいという人々は二十四時間、七百五十六日途切れることはない。どこに行こうが誰かの目があり、もちろん見ているだけなんて消極的な人間ばかりではないので、ヴァンに一人きりの静かな時間は皆無だった。こんな状況では悪巧みなど脳内でする以外不可能だろう。
一人になれるのは唯一睡眠中、夢の中のみだった。
もっとも、それだってとてもわずかな時間しか得られなかった。毎夜遅くまで訪問者は途切れることがないし、朝も日の出と共に起こされると言っても過言ではない。
「お客様がご朝食をご一緒されたいとお越しになっております」
ヴァンを起こしに来た従者―――神託の盾(オラクル)の少年兵である―――は笑顔で「お待たせするわけにはいきません」と急かす。英雄と呼ばれているとはいえ、神託の盾騎士団の主席総長という身分しか持たぬヴァンに、多額の寄付金を背負った各国の貴族たちの誘いを断る術はなかった。
英雄に何かあっては大変とヴァンの泊まる部屋の警護は万全であるから、貴重な睡眠時間を削って逃げだすことも不可能だ。侵入者を許さないということは、中にいる者が自由に外に出ることができないと同義である。
「なぁアッシュ。これでよかったのか?」
「あぁ、上出来だ」
アッシュとルークは次々と地上に溢れる障気を中和していった。
ヴァンが「パッセージリングが耐久年数の限界にきていることを突き止めた」と言っていると両国の上層部に伝えれば、各国の研究者たちはこぞってそれを裏付けるような調査結果を発表した。
「外郭大地は降下させるべきである」と提案していると伝えれば、誰もがそれに賛同した。
世界は英雄の言葉に絶大なる信頼を寄せていたので、大きな混乱もなくすべての作業を終了することができた。
実際にこれらのことをヴァンが人前で言ったことはない。
連日のように訪れる人々との会食で忙しいヴァンに「それは自分が言ったことではない」と否定している時間はなかった。いや、世界が変わりつつあることさえ知らないだろう。
ユリア以来の救世主の出現に世界は湧いた。ヴァンがそのユリアの子孫であることも明らかにされ、彼は益々神聖視されるようになった。そしてヴァンの自由は更になくなった。もちろん削れるところなどあとは睡眠時間ぐらいしかなかったので、ヴァンはげっそりとやつれていった。
食生活は充実、睡眠時間は減少、自由行動は皆無。剣を振るう機会などあるはずがなく、今では武人として理想的な体形を誇っていたころの面影はない。
その姿を見てアッシュが溜飲を下げたのはここだけの話だ。
すべての功績をヴァンのものとしたのは、彼に英雄という肩書きを与え、自由を奪うためだった。
誰も傷つけず、誰も殺さず、世界を救いたいとルークが望んだ。その中には当然ヴァンも含まれていた。
ルークの望みを叶えることはアッシュとローレライの望みだった。だからと言ってヴァンを許すつもりは微塵もなく、ルークに悟られないような意趣返しを計画したのである。
「英雄」と言葉だけならば誰もがなってみたいと憧れる存在だろう。
しかし実際にやってみるとそこには様々な精神的苦痛があった。それが身に覚えのない功績を讃えられて得た称号であれば尚更だろう。
もちろんルークがそれに気付くことはない。
ヴァンは死ぬその瞬間まで英雄だった。本人のあずかり知らぬところでその功績は増え続け、それと比例するように体重も増加の一途を辿った。
死因は脳卒中とも心不全とも言われているがあきらかにはされていない。しかし食べ過ぎ、運動不足、睡眠不足がヴァンの寿命を縮めたことは疑いようのない事実だった。もしかしたらストレスも原因の一つであったかもしれない。
「英雄として死ねたんだ。ヴァンも満足だろうよ」
「そうだよな。師匠が超振動で障気の中和ができるって教えてくれたから世界を救うことができたんだもんな」
ヴァンの眠る墓の前で、ルークは誇らしげに師が吐いた最後の嘘を復唱する。
あれから十数年が過ぎていた。ルークはそれがヴァンの嘘だったことを忘れているようである。いや、今生でのそれは真実だった。
ルークが嬉しそうなので、「まぁいいか」とアッシュは思う。


―――世界を再生させた英雄、ここに眠る。
その白い墓石の前から花が消えることはなかった。死してなおヴァンに静寂が訪れることはない。







~あとがき、と書いて言い訳と読む~

超振動で障気の中和は可能か?
答えは是である。
バチカル城の地下牢でヴァンが「超振動を起こして障気を中和する」と言った時、彼はそれが可能であると知っていたのだろうか。たぶん知らなかったのだろうな、と思うことにしました。
アクゼリュスが崩壊したのは超振動の力がパッセージリングに向けられてしまったからである。ならば正しく障気のみに向けられていたらどうなっていただろうか。ヴァンの嘘は本当になって、もしそうなっていたらヴァンはどうするだろう? なんて考えた結果できたネタなのですが・・・。予想外の展開にアタフタする間もなく英雄に祭り上げられたあげく、お亡くなりになってしまいました。まぁ予定が未定なのはいつものことです。
地核に閉じ込められたローレライは本編開始よりもずーと前に鍵を赤毛たちに託して解放してもらいました。黒幕の一人(?)です。
大爆発?―――それもローレライが何とかしたということにしておきましょう。
外殻大地降下作戦でユリア式封咒の解呪はティアが行いました。兄の指示ってことになっています。世界のために妹に犠牲を強いる兄、は一歩間違えれば英雄の肩書きを脅かすものですが、その辺も誰かが世論を上手く操作してヴァンの人気を高めるために利用しました。解呪するのはアクゼリュスの封咒のみです。アルバート式封咒の解呪法をローレライが知っていて、パッセージリングの操作はアクゼリュスから遠隔操作しました。解呪一回分の障気なのでティアの障気障害はそんなに深刻なものではない、と思いたい。
ヴァンを引きずり回して解呪させてもよかったのですが、ヴァンの死が自然死じゃないとルークの望みに反することになるのでできませんでした。
ダアトで毎日出される食事の味付けがちょっとずつ濃くなっているとか、それとなく高カロリーなものばかりだったとか、そういうことは本人にも気付かれないようにこっそりと。ルークは気付いてもそれが病気の原因になるとは思わないでしょう。他の人間も同じ物を食べているわけですし(他の人が大丈夫なのは身体を動かしているからです)。アッシュはダアトの料理人に「謡将はもう少し濃い味付けが好みだ」とか言っていると思います。十時三時のおやつに、夜食も付けましょうか。キムラスカ国王やマルクト皇帝主催の晩餐や、貴族の家に招かれた時の料理は、わざわざ指示しなくても高カロリーですよね。強いお酒もいっぱい飲まされたと思います。
高血圧に脂質異常、そして通風。でも医者の診察を受けている暇はありません。食事療法も運動療法も物理的に難しそうです。
憐れヴァン師匠(てんてー)は・・・・・・
どうしてこうなってしまったのか、死ぬまで考えても答え出せなかったヴァンに教えてあげましょう。

障気は超振動で中和できるのです。

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