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道化師は微笑う。

TOA中心二次創作サイト。

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約束①

≪注意事項≫
相も変わらず、読む方を選ぶ内容となっております。
以下の警告をよく読んだ上、ご覧になるかどうかご判断ください。


・アッシュとルークが敵同士(?)のお話。
・敵同士だけどアシュルク(+か×かは読まれた方の判断に委ねさせていただきます)。
・お互いに本気で殺し合っている。でも、相手が自分以外の誰かに傷付けられるのは我慢ならない。そんな赤毛二人。
・国を思うアッシュや、世界のために命を捧げるルークがお好きな方はご覧にならないことをオススメします。
・仲間に厳しめというか、仲間は空気。
・あとHAPPY END好きさんも止めておいた方がよいかもしれません。
・死にネタです。「預言遵守ルート」とも言います。
・流血注意!
・救いはまったくありません。

以上、大丈夫そうな方のmoreよりご覧ください。






【それで世界が滅ぶとしても~約束、あるいはそれを定めと呼ぶ~】



何もかも、どうでもよかった。
この国に生まれ、この国のために生き、そして死ぬこと。
予め定められた未来。
預言と呼ばれる死の国に向かうレールの上を走れと言われた。無視していたら強固な檻付きの列車に乗せられた。この列車にブレーキは付いていないらしい。脱線でもしない限り止りそうにないから、アッシュ―――その当時は別の名前で呼ばれていた子供は、列車の中で不貞寝を決め込んでいた。
止まるはずのない列車が止まったのはアッシュが十歳の時である。
脱線でもしない限り止りそうにない列車は、一人の男の手によって脱線させられたのだ。
男はアッシュを別のレールの上を走る列車に乗せた。
その列車もまた死の国に向かっていることにアッシュが気付くのは、列車が走り出して直ぐのことである。
この列車には前の列車と違うことが一つだけあった。
アッシュを閉じ込めて置くための檻がついていなかったのである。
それは檻を準備する暇がなかったからか、それともアッシュが逃げ出すことはないと高を括っているからか。
だが列車を降りたところで何になる。
すべてのレールは死の国に向かっている。
この星を乗せた列車が向かっている先もまた、然り。
ゴロリと横になって、車窓を流れる景色に目を向ける。
そこに見慣れぬ朱があった。



水槽の中で朱が揺れる。
これはアッシュが降りた―――降ろされた列車に乗せるためのレプリカであると男は言った。
なるほど、あの国は脱線した列車を再びレールに戻すつもりか。その時そこにアッシュが乗っていないというのは拙いのだろう。すでにアッシュを別の列車に乗せてしまった男がどうするつもりかと思ったが、最初から身代わりを用意していたらしい。
しかしあの男は何やら勘違いしているようだ。
アッシュはけっして前の列車に未練があるわけではない。もちろん今の列車を気に入っているわけでもなかったが。
戻る場所はないのだと、そうわからせるためにこれの存在をアッシュに明かしたかっただけなのだろうけれど。
「これからはこれが『ルーク』だ。おまえは、そうだな。燃えカス―――アッシュというのはどうだ」
自分の思いつきが余程ツボだったのか、男は高らかに笑った。笑いながらアッシュを残し部屋を出て行った。
扉の閉まる音を背後に聞きながら、翡翠の双眸は目の前の朱から逸らされることはない。
指先が培養槽のガラスに触れる。思った以上に硬く、冷たい感触。
アッシュは培養槽で漂うレプリカをガラス越しにそっと撫で上げた。
「生き残れ。そして俺を殺しに来い」
目覚めないはずのレプリカがうっすらと目を開ける。
そこにはあったのは想像していた通りの翡翠だった。
自分の姿を認めニッコリと微笑んだレプリカにアッシュは満足そうに笑った。
「おまえは俺が殺してやろう」
それがアッシュとレプリカのたった一つの約束だった。



何かにとりつかれたように剣を振る。
剣術の稽古は好きだ。
強くなって殺さなければならない人がいる。
それが誰のことかわからなかったけれど、会えばわかるはずだとルークは確信していた。
ルークには十歳までの記憶がなかった。
誘拐され戻ってきた時には赤子のようになっていたのだと、その当時を知る者は言う。
覚えていたのは目の覚めるような鮮やかな赤と、一つの約束。それから『ルーク』という名前。
花の赤も、夕陽の赤も、己が纏う赤も、どの赤を見ても違うと感じる。一番近いと感じた赤は己の流した血の色だったが、それも似ているだけで求めている色とは違った。
求める色はこの世のどこにもないのではないかと、挫けそうになる度にルークは剣を振るった。
約束を果たすために強くならなくてはいけない。
いつか出会う赤のために、ルークは剣を振るい続けた。



ルークの日常が急変したのは、ND2018・レムデーカン・レム・二十三の日のことである。
屋敷に侵入してきた神託の盾(オラクル)兵の制服を身に着けた女―――後にルークの剣の師としてファブレ家に出入りしていた神託の盾主席総長ヴァン・グランツの妹と判明する―――ティア・グランツと擬似超振動を起こし、白い花畑に飛ばされたのである。
初めて見る外の世界。
壁の向こうに広がっていたのは無限だった。
ここになら求める赤があるかもしれない。
ルークはこの偶然に感謝した。
家に送ると言う女を従えて、渓谷を下る。
道々襲ってきた魔物を一刀の下に切り捨てて、流れる赤に口角を上げた。
綺麗な赤。
だけど求める色とは違う。
似ていることは慰めになったが、それにルークが満足することはなかった。



不法入国を理由に連行されマルクト軍保有の陸艦タルタロスの一室。
この状況で「協力」とは笑わせてくれる。
和平への協力を願い出たマルクト軍人とローレライ教団の導師の言葉に、ルークは失笑を禁じえなかった。
「いいだろう。協力してやるよ」
突然笑い出したルークに、「不謹慎だわ」と喚く女にも、言われるままに膝を付く軍人にも、嬉しそうに礼を言う導師にも。
興味なんてものは最初からなかった。
己を殺すのは目の前の軍人でも、聖職者でもない。
だったらそれはいないも同然ではないか。
ルークの中にあるものは目の覚めるような鮮やかな赤と、約束。ただそれだけだったから。
約束を果たすまでは死ぬわけにはいかない。
だから彼らの申し出を受け入れた。
受け入れた先にある和平が偽りだろうとなかろうと、己が生きていればそれでよかった。



艦内に響く警報と、緊迫した声。
乱れる足音を遠くに聞きながら、ルークは艦橋(ブリッジ)を目指して走っていた。
甲板に出ると、さっきまでまとわりついていた咽返るような血の臭いがしなくなった。
ルークは「ふう」と大きく息を吐く。
自分が思っている以上に緊張していたのだろうか。
「貴方はそこで見張りをしていてください」
ルークが抗議の声を上げるよりも早く、ジェイドはティアを伴って艦橋の中に消えた。
二人の軍人が消えた扉を背にして、天を仰ぐ。
青い空を背景に赤い髪が風に舞っていた。
「見つけた」
それは求めていた赤い色。
その色は本当に存在していたのだと、嬉しさに身の内が震える。
ルークは自分に向かって降り注ぐ氷の刃を避けることもせず、その赤に見惚れていた。



間抜け面をして固まっていやがる。
アッシュは数年ぶりに見る朱に、口角を上げた。
まさかこんな所で再会するとは思わなかった。
その朱がどんな風に成長しているのか確かめたくて、氷の刃を見舞う。
服が、腕が裂け、朱色が散った。
避けることもせずに自分だけを見つめる翡翠。
そこに怯えはない。
なるほど、身体が竦んで動けないわけではないようだ。
ククッと、喉を鳴らす。
眼前に飛び降りて、左腕で抱きしめる。右手は朱の剥き出しの腹に沈んだ。
「うっ」と小さく呻いて、全体重を己に預けてくる身体を抱きしめながら、アッシュは狂ったように笑い続けた。
重なる心音。
頬に触れる頬の滑らかさ。
掻き抱いた背中で指に絡まる朱色の髪。
何もかもが心地よかった。



艦橋の扉が開き、人影が二つ飛び出してきた。
「彼を放しなさい」
小さな舌打ちを一つして、アッシュはルークを抱えたまま襲い来る槍を避ける。
自分とレプリカを引き離そうとする存在に、アッシュは怒りも顕に譜術を放った。
その譜術に一人は気を失ったようだったが、もう一人は無傷でそこに立っていた。
まずい、と死霊使い(ネクロマンサー)がつぶやく。
「今の騒ぎで譜歌の効果が切れたようですね」
神託の盾(オラクル)兵が数人走ってきて、彼らを取り囲んだ。
次の指示を仰ぐように自分を見る部下に、アッシュは「殺せ」と短く命じると、ルークを抱えたまま艦内に足を向ける。
「アッシュ! 閣下のご命令を忘れたか?」
その背を女の鋭い声が追いかけてくる。六神将の一人、魔弾のリグレットだ。
二つの相反する命に固まる神託の盾兵たち。
誰かの指示がなければ行動できない部下。
ヴァンの言葉に従うことしかできない女。
どちらもうんざりだ。
「好きにしろ」
アッシュは振り返らなかった。
彼らを捉えるように命じるリグレットの声を背中に聞きながら、艦内にその姿を消した。



人気のない船室の硬いベッド。
無邪気に眠るレプリカの首にそっと手を掛ける。
このまま力を込めれば、コレの命の火を消すことができる。
親指にちょっとだけ力を入れると、ルークは苦しげに眉根を寄せて、身を捩った。その拍子にアッシュの手が外れた。「げほっ」と小さく咽返って、朱色の睫毛に縁取られた瞼が震える。
「俺を殺すのか?」
「そういう約束だ」
焦点の定まらない翡翠の瞳。
うっすらと水気を含んだ宝石が室内を照らす音素灯の光を受けてキラキラと輝く。
「ゴメン。俺はまだおまえを殺せない。殺せる程強くなってない」
何がそんなに哀しいのだろうか。
静かに涙を溢れさせる翡翠に、そっと唇を寄せる。
その拍子に首筋に添えられた手に力が入ってしまったのは、アッシュの意識するところではなかった。
翡翠は既に瞼の下だ。
それを物足りないと思いながら、アッシュは身を起こした。
大きく上下する胸を見てほっとしている自分を自覚して、「ちっ」と小さく舌打ちをする。
眦に溢れた涙を指で掬い、頬、首筋、肩と掌で辿る。
握り締めた同じ形をした掌。
己と同じ場所にある剣胼胝(けんだこ)を指でなぞって、アッシュは満足そうに笑った。
「努力は認めてやるよ。まだまだなようだがな」
その手に唇を寄せて、剣胼胝を食(は)む。
味などしないはずのそれが、酷く甘いような気がした。



アッシュは己のレプリカを抱えたまま懐かしい場所に来ていた。
レプリカが生まれた場所。
自分とレプリカのレールが交わった場所である。
点滅を繰り返す譜業の光。
あの日とよく似た情景。
目覚めぬレプリカを連れてタルタロスを降りた。
ヴァンの命令を全うすることしか頭にないリグレットの目を盗むのは、それほど難しいことではなかった。
あれからレプリカは眠ったままだった。
見たいと思った翡翠が見られぬことに不満が募る。
だから、この場に連れてきた。
不本意ではあったが、ディストも呼びつけた。
自称薔薇のディスト。他称は死神だったり、洟垂れだったりするが、この男がレプリカを創った張本人であることに間違いはない。
「心配はいりませんよ。眠っているだけです。目覚めないのは本人が起きたくないと思っているからでしょう」
何を思って目覚めを拒否するのか?
アッシュは沸々と湧き上がる怒りを抑えきれず、怒鳴っていた。
「無駄です。聞こえてはいませんよ」
どうにかしろと詰め寄ると、ディストは同調フォンスロットを開くことを提案してきた。
聞こえないのであれば、直接脳に話しかければよい、と。
被験者(オリジナル)とレプリカ―――完全同位体の間でしかできないことらしいが、理屈に興味はなかった。
大事なことは、できるか、できないか、だ。
望む答えを返すディストに、アッシュは満足そうに笑った。

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